※続きです

さらに、日本脳炎ウイルスの遺伝的変異が、媒介蚊への感染能力を高め、感染範囲を広げている。
養豚業が盛んなベトナムの都市部における研究は、7885匹の蚊を352のプールに分け、日本脳炎ウイルスについてスクリーニングしたところ、6つのプールにおいて日本脳炎ウイルス陽性の蚊が検出され、都市部における日本脳炎の感染リスクが示唆された*7。

また、ベトナムの同地区における他の研究では、豚の飼育と日本脳炎ウイルス媒介蚊の分布について調査しており、豚の飼育数に比例して媒介蚊の数が増加することが明らかになった*8。
日本脳炎ウイルスの感染リスクに晒されるのは、観光やボランティアのために農村部へ旅行する人だけではない。
観光や出張のために都市部に旅行する人もまた、リスクに晒されている*9、*10。

■日本脳炎ワクチンプログラムを普及させる必要がある

日本脳炎を発症すると、致死率は20〜40%と高く、生存しても45〜70%に後遺症が残る。
有効な治療はないため、予防が重要だ。

日本脳炎はワクチンで予防できる。
日本脳炎ワクチンには、1回の接種で済む生ワクチン、および3回の接種が必要な不活化ワクチンがある。

日本政府は、ワクチン接種に関する情報開示を積極的に行うべきだ。
特に、ワクチンを接種していない世代へのアプローチは必須だろう。
さらに、旅行者へのワクチン接種勧奨も必要だ。

そして、国民は、自ら情報を集め、必要な予防接種を受ける必要がある。
もし、政府が動かないのであれば、自分の身は自分で守るしかない。
西日本や東北地方における集中豪雨と洪水は、日本脳炎ウイルスの媒介蚊であるコガタアカイエカの繁殖を促進させる環境であるため、一層の注意が必要だ。

論旨は変わるが、北海道以外の出身者でも、日本脳炎ワクチンの「積極的勧奨の差し控え」によって、ワクチンを打ち損ねている人がいる。
日本脳炎の予防接種後に重い病気を発症した事例をきっかけとして、平成17〜21年度までの間に「積極的勧奨の差し控え」があり、予防接種の案内が出されなかった。

平成7〜18年度に生まれた人は、平成17〜21年度に日本脳炎の予防接種を受ける機会を逃している可能性が高く、母子健康手帳の確認、および予防接種が必要だ。
今後は、日本を含むアジア全域で日本脳炎ワクチン接種を促進する必要があるだろう。

このウイルスは「日本」脳炎ウイルスと称され、日本の冠を被る。
日本がリーダーシップをとったらどうだろうか。

※おわり〆