官房長官「4割値下げ可能」発言で激震 長谷川 幸洋 (ジャーナリスト)

■諸外国と比べてあきらかに高い

菅義偉官房長官が8月21日、札幌市内で講演し、携帯電話料金について「4割程度、下げる余地はある」と述べた。これを受けて、大手携帯3社の株価が一斉に急落する事態になった。はたして携帯料金は下がるのか。

菅長官は「(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社の)携帯電話料金はあまりにも不透明で、他国と比較すると高すぎる。競争が働いていないと言わざるを得ない」と指摘した。
そのうえで「(事業者は)国民の財産である公共の電波を利用している。過度な利益を上げるべきではなく、利益を利用者に還元しながら広めていくものだ」と述べた。
これには、まったく同感だ。私もかねて携帯電話料金は「複雑で分かりにくい」と思っていた。
パンフレットを読んでもよく理解できず、少し時間が経つと、料金や割引システム自体が変わっていたりする。「消費者に優しい」とは、とても言えない。
つい最近も「とっくに解約した」と思っていた契約が、実は解約できていなくて、消費者センターに相談したくらいである。これについては、後で触れよう。

総務省は23日に開いた情報通信審議会(総務相の諮問機関)に携帯電話料金の引き下げについて諮問した。今後、有識者による検討会議を立ち上げる予定だ。この際、ぜひ料金引き下げを実現する方向で議論してほしい。
いきなり結論を書いてしまったが、携帯電話料金については、これまでも政府内で議論されてきた。2015年9月には、安倍晋三首相が経済財政諮問会議で「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題。
その方策についてしっかり検討を進めてもらいたい」と総務相に指示した(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/gijiyoushi.pdf)。
その後、昨年9月に電気通信事業法施行規則が一部改正され、同12月には総務省が有識者を集めて「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を立ち上げた(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/mobile_market/index.html)。
結論はことし4月、報告書にまとめられている(http://www.soumu.go.jp/main_content/000548405.pdf)。
今回の官房長官発言は元を辿れば、3年前の総理指示に行き着くのだから「とりあえず検討する」といった程度の話ではない。遅すぎたくらい、と言ってもいい。安倍政権として、あらためて料金引き下げに意欲を示した形である。

さて、日本の携帯料金は高すぎるのだろうか。
総務省は毎年「電気通信サービスに係る内外価格差調査」を実施している。最新の2017年7月調査によれば、
自社で回線網を設置、運用している事業者(MNO、大手3社)によるスマートフォンの料金(月20GB)は東京が8642円、ニューヨークが7215円、ロンドンが2947円だった(http://www.soumu.go.jp/main_content/000493771.pdf)。
これをみると、大手3社はあきらかに高い。ニューヨークに比べて19%高く、ロンドンに比べると、実に3倍近い料金である。データ容量が月2GBや5GBだと、ニューヨークより安いが、すぐ上限に達してしまって結局、割増料金を払っている消費者も多いはずだ。

自社で回線網を備えず、大手事業者から借り受けたりしている事業者(MVNO、楽天モバイルなど)はどうかと言えば、同じスマートフォンの料金(月20GB)で東京が5726円、ニューヨークが6740円、ロンドンが4126円だった。
やはり、東京はロンドンに比べて38%高である。

■携帯3社は「儲けすぎてはいけない」

各社の収益がどうなっているかといえば、NTTドコモの18年3月期の営業利益は9732億円、KDDI(auブランド)が9627億円、ソフトバンク(国内通信事業のみ)が6829億円で、3社合わせて2兆6188億円に上った。
3社合わせると、トヨタの連結決算の営業利益2兆3998億円を上回っているのだ。
こう書くと、中には「携帯料金が高くて儲けすぎと言っても、民間企業なのだから、政府が口を出す話ではない」と思われる読者もいるかもしれない。ここは大事なポイントだから、しっかり確認しておこう。
携帯電話会社とトヨタはまったく違う。菅官房長官が言ったように、携帯電話会社は国の免許を受け、国民の共有財産である電波を使って事業をしている。つまり、国民から資源を借りて事業をしているのだから「儲けすぎてはいけない」のである。
言い換えれば、私たち消費者(=国民)が電波資源を携帯会社に貸して、事業をさせてあげているのだから、儲けすぎなら「もっと料金を安くしろ」と注文を付けるのは問題ないどころか、本来、当然の要求なのだ。

続きはリンク先にて

2018.08.24 現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57173