野焼きに関する苦情のイメージ
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農家による野焼き。病害虫駆除などで古くから行われてきたが、近年は周辺住民とのトラブルが増えている=兵庫県三田市
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 農家が稲わらや刈り取った草を屋外で焼く「野焼き」。病害虫駆除の役割などを果たすとして古くから行われてきたが、平成13年改正の廃棄物処理法で「農業を営む上でやむを得ない場合」を除き、全面禁止になっている。ところが、ニュータウンなど農地と人口密集地が近接する地域では近年、野焼きに対し「臭い」「煙たい」などの苦情や、火事と間違われて通報されるなどのトラブルが急増している。自治体側も野焼きのガイドラインを策定したり、相談ダイヤルを設置するなど対策に乗り出したが、全面禁止にすることは難しく、根本的な解決策は見つからないままだ。(中川三緒)

人口急増に合わせ苦情殺到

 兵庫県南東部に位置する三田市。かつてはおだやかな農村地帯で、昭和33年の市制施行当時の人口は約3万2千人だったが、50年代から大規模なニュータウンが開発され、60年まで3万人台で推移していた人口は平成2年に6万人、8年には10万人を突破した。人口増加率が昭和62年から10年連続で日本一となるほどで、現在も人口の約半数がニュータウンに居住する。 宅地開発が進む一方、古くからの農地も残ったが、近年、市街地と農地の境界付近で野焼きへの苦情が増加している。

 市環境衛生課によると、野焼きへの苦情は平成28年度で33件、29年度で62件だったが、30年度は7月末時点で114件と急増している。

 警察への通報も増え、兵庫県警三田署が対応を強化している。同署は「草はクリーンセンターなどで処分できる。農家の野焼きとはいえ、個別で適法かどうか判断する」として、煙やにおいなどに対する通報を受けると、農家へ出向き指導。違法の疑いがあると判断すれば事情聴取なども行っている。

遅れ目立つ市の対応に痛烈批判

 ただ、市はこれまで「野焼きは違法ではない」との立場をとっていた。昨年9月の市議会本会議でも、森哲男市長は「農業者が行う稲わらなどの焼却は廃棄物処理法の例外にあたり適法である」と答弁。警察が取り締まりを視野に入れる一方で市が野焼きを認めたことから、混乱が生じた。

 今年1月には市民からの申し立てを受け、市の第三者機関「オンブズパーソン」が野焼きを巡る市の対応について調査を開始。5月に調査結果通知書を森市長に提出した。そこで、オンブズパーソンの曽和俊文・関西学院大教授は「周囲一面が田畑の地域では野焼きは『お互いさま』。都会では、ほとんどない。三田市のように農地があり、住宅都市でもある地域に立ち現れる避けることのできない問題だ」と指摘する。

 曽和教授は市の対応について、「苦情に正面から向き合っていない。現状を把握せず、問題解決の具体策を検討しなかった」と痛烈に批判。その上で「野焼きに関するガイドラインをつくったり、届け出制を導入したりするなど、市には問題が起こらないような積極的なシステムづくりをしてほしい」と訴えた。

 このような指摘を受け、市はようやく8月から野焼き専用ダイヤルを設置。土、日曜日と祝日を含めて環境衛生課の職員が対応にあたる態勢を整えた。ガイドラインも作成し、「原則禁止」とした上で、やむを得ず野焼きする場合でも夜間や11月からの2カ月間を自粛期間とした。周辺住民に影響しないよう風向きに配慮することも明記。自走式草刈り機の導入など、野焼きを減少させる取り組み例も盛り込んだが、画期的な解決策を提示するまでには至っていない。

解決策ないまま野焼きの季節に…

 全国の農産地ではどのような対策が取られているのか。総務省の公害苦情調査によると、平成28年度に全国の地方公共団体に寄せられた苦情7万47件のうち、野焼きが原因の苦情は1万2576件(約18%)と最も多く、野焼きは全国的な問題といえる。

 農業が盛んな新潟県では、5年に独自に「県稲わら等適正処理に関する指導要綱」を制定し、土壌保全のためにも刈り取った稲わらを細かくして土に混ぜ込む「すき込み」という方法を推奨した。県農産園芸課によると、14年からは稲わらのすき込み率は90%以上で推移しており、現在は県への野焼きに対する苦情はほとんどないという。

(続きはソース)

2018.9.14 06:30
https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n1.html