安倍晋三首相は今回の訪米で「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉開始に応じること自体をカードとした。じらしたうえでの交渉開始を日本側の「譲歩」という形に見せ、11月の米中間選挙を前にトランプ米大統領に花を持たせるとともに、米国が中身で強硬策に出るのは防いだ。貿易問題でこれ以上、具体的な対応を引き延ばせば、北朝鮮の非核化や拉致問題への日米協力にも悪影響が出かねないとの判断もあった。

 「トランプ政権は韓国、欧州連合(EU)、メキシコと通商の枠組みを見直してきた。この流れの中で、日本だけがいつまでもゼロ回答とはいかない」

 26日の日米首脳会談前、政府関係者はこう指摘していた。その中で今回の会談の結果、日本は自動車関税強化を回避できた。

 安倍政権は昨年1月の大統領就任以前からトランプ氏が安全保障と経済を混同しかねないとの懸念を持っていた。そこで昨年2月の日米首脳会談で発表した共同声明で安保と経済を分けることを狙い、成功した。

 その際、日本側は麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領による「経済対話」の枠組み立ち上げを提案した。さらに今年4月の首脳会談では閣僚級の新たな通商協議(FFR)を設置し、時間稼ぎを図った。

 日本としては、積極的に交渉に応じる理由はなかった。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に日本を引き込んだのはオバマ前政権で、政権が交代したからといって2国間の自由貿易協定(FTA)というのは身勝手すぎるとの思いもあった。

 ところが、今年に入り状況が変わった。朝鮮半島情勢が動き始めたのだ。軍事的圧力と経済制裁で北朝鮮を対話路線に引っ張ったトランプ氏との協力は拉致問題解決に不可欠で、その協力が得られないような対立は回避する必要があった。

 ただでさえ日本は昨年2月から1年7カ月以上、協議を引き延ばした形だ。通常のトランプ氏であればその首脳との関係もこじれていただろうが、首相との間だけは違っていた。

 「シンゾーとの友情があるから自動車に関税をかけられなかった」

 トランプ氏は26日の首脳会談で、首相にこう伝えた。自民党総裁選では「友情」と「国益」は別であるかのような論争もあったが、貿易協定をめぐる交渉は首脳間の友情が国益に直結する場合があることを裏付けた。(ニューヨーク 田北真樹子)

2018.9.28 07:07
産経ニュース
http://www.sankei.com/politics/news/180928/plt1809280003-n1.html

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