エボラ上陸に備え、情報公表の方針・基準策定へ 厚労省

エボラ出血熱の情報公表基準案
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産経 2018.10.7 21:00
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 致死率が高いエボラ出血熱など公衆衛生上で特に重要な感染症について、厚生労働省が、国内で感染者が出た場合の情報公表に関する基本方針や基準の策定を検討していることが7日、分かった。国内でエボラ熱の感染例はないものの、今年はアフリカ中部のコンゴで「破滅的な事態になる可能性」が警告されており、日本でも患者保護や感染拡大防止の観点で情報公表の基準策定が急務となっている。

 検討されている基本方針では、情報の公表に当たって「公衆衛生上の対策の必要性」と「個人情報保護の必要性」を比較し、「公衆衛生上の対策の必要性が高い」と判断した情報が公表されることになる見込み。併せてエボラ熱に感染した個人情報の公表基準も作成する。

 具体的な案として、患者の居住国、年代、性別などは「公表」、氏名、国籍、基礎疾患などは「非公表」に分類。搭乗した飛行機の情報、受診に至る経路などは「原則非公表」。中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザなどの情報の公表基準も作成する方針だ。

 国立国際医療研究センターの大曲貴夫副院長は「個人が特定されかねない情報が公表されれば、医者との信頼関係に溝が生じ、患者とのコミュニケーションは成り立たず、公衆衛生の綻びにもつながりかねない」と指摘。一方で、「感染症にかかった患者に接触した人を把握しきれていない場合、発症の可能性がある人にリスクを呼びかけていくためにも、『(発症した)患者がどこにいたか』といった情報は公表していく必要がある」と訴える。

 エボラ熱をめぐっては、西アフリカで流行のあった平成26年、国内でも感染疑い例が相次いだ。今年も海外で発生が確認されており、厚労省は5月、都道府県などに対し、「発生地域から帰国し、疑わしい症状がある場合には、早期に医療機関を受診し、適切な診断および治療を受けることが重要」との注意喚起を通達した。

 コンゴの保健省は8月1日に「流行」を宣言。感染疑いを含めた死者は今月3日時点で106人に上る。同国内では武装勢力の活動で十分な治療が行えず、世界保健機関(WHO)は9月、「破滅的な事態になる可能性がある」との懸念を表明している。