「まずかったからタダにしろ」「カニで顔を殴られた」…。
タクシーやホテル、病院などで働く従業員らの約7割が、客や患者からの「悪質クレーム」に悩んでいる。

産業別労働組合のUAゼンセンが、約3万人にアンケートを実施し判明した。
なかには精神疾患を発症した従業員もおり、深刻な実態に法規制を望む声も高まっている。

■脅迫やセクハラ

「客から完食後に『まずかったからタダにしろ』と言われ、断ったら怒鳴られた」。
アンケートの自由記述欄には、従業員らの悲痛な声がつづられていた。

ゼンセンがこうしたアンケートを実施するのは初めてではない。
昨夏にはコンビニやスーパーマーケットなど流通・サービス業に限定して実施し、同じように約7割が悪質クレームに悩んでいた。
さらに実態を解明するため、今回は対象業種を拡大して調査した。

調査によると、悪質クレームを受けたことがあると回答したのは約3万人中、約2万2400人。
最も多かった行為(複数回答)は「暴言」が約1万4000件だった。
「威嚇や脅迫」が約1万2000件あり、「土下座の強要」も約1200件あった。

なかには「持ち帰りした天丼のたれが車のシートにこぼれたから洗浄代を払え」というクレームや、「焼きガニを提供していた従業員が、客に『焼きが悪い』と言われ、カニで顔を殴られた」というケースもあり、脅迫や暴行など刑事事件になりかねない事例もあった。
さらに「性的な内容を我慢して聞いていたら、エスカレートして尻や胸などを触られたり、抱きつかれたりした」「『肩をたたくのはセクハラにならない』と言いながら、意味もなく肩をたたかれた」などセクハラを訴える声も多い。
こうした悪質なクレーム行為に、9割が「ストレスを感じた」と回答しており、そのうち189人が精神疾患を発症したという。

■顧客モラル低下

なぜこのような横暴が増えてきたのか。
その原因について、約27%が「顧客のモラルの低下」を挙げたほか、「ストレスのはけ口になりやすい」(22・7%)、「従業員の尊厳が低く見られている」(17・9%)も多かった。

ゼンセン総合サービス部門の古川大事務局長は「クレームには企業の今後の発展に資するものも数多くある。
しかし、度を越えた犯罪的なクレームを何とか抑止、撲滅したい」と強調した。

関西大の池内裕美教授(消費心理学)は「法律を制定して統一ルールを作るのは難しいかもしれないが、自治体が条例を制定するなり、業界でルールをつくるなり規制が必要だ。
消費者自身が怒りを抑え、寛容な心を持つことや、『賢い消費者』を育成するための消費者教育なども必要だろう」と指摘している。

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