米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の進展に向け、政府は当面、先の県知事選で初当選した玉城デニー知事と対話を進める構えだ。

 玉城氏は協議に前向きな姿勢を示しており、政府には何らかの歩み寄りがあり得るとの期待がある。加えて、いきなり強引な姿勢で臨めば知事選で顕在化した県民の反基地感情をあおりかねないと懸念しているためだ。

 菅義偉官房長官は9日午後、那覇市で開かれた翁長雄志前知事の県民葬に参列。列席者の一部から「帰れ」「うそつき」と罵声を浴びせられながらも、「沖縄県民の気持ちに寄り添いながら、沖縄の振興発展に全力を尽くす」との安倍晋三首相のメッセージを代読し、遺影に献花した。

 この日、菅氏は玉城氏とあいさつを交わす程度にとどめた。ただ、かねて「なるべく早く会いたい」と語っており、週内にも玉城氏と正式に会談したい意向だ。

 一方、県民葬を終えた宮腰光寛沖縄担当相は9日夕、閣僚で初めて玉城氏と県庁で会談。玉城氏が「辺野古の新基地建設に反対する」と伝え、日米地位協定見直しなどを求めた要望書を手渡すと、宮腰氏は「しっかり受け止める」と述べた。

 強硬一辺倒だった政府が一転して対話に傾いているのは、過去最多の39万票超で玉城氏を知事の座に押し上げた県民世論を無視できないためだ。政府は当初、沖縄県の埋め立て承認撤回に対する「執行停止」の申し立てを知事選後に「粛々」(高官)と行う方針だったが、期限を明示せずに先送りを続けている。14日に告示を控える那覇市長選も政府を慎重にさせているとみられる。

 ただ、政府と県が話し合いで折り合う余地は乏しい。翁長氏の後継として知事選を戦った玉城氏は、政府に弱腰な姿勢を見せれば足元の支持が揺らぐ。同氏は9日夜、安倍政権への対決姿勢を強める立憲民主党の辻元清美氏ら主要野党の国対委員長と県庁で会談し、緊密な連携を確認した。

 政府は玉城氏との対話に乗り出す半面、法廷闘争も辞さない姿勢を崩していない。協議が決裂すれば承認撤回の執行停止を裁判所に申し立て、訴えが認められるのを待って辺野古沿岸部での土砂投入に踏み切るとみられる。 

10/10(水) 10:57
時事通信
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