トランプ米大統領は9日、エタノール比率の高い自動車用燃料を販売しやすくする措置に動いた。トウモロコシ生産農家とバイオ燃料生産業者にとって有利な結果で、長期的な相場上昇につながる可能性がある。

 トランプ大統領はエタノール比率が最大15%のガソリン「E15」に関する夏季の燃料供給規制の撤廃を環境保護局(EPA)に指示する覚書に署名したと発表した。大統領はこの日の夜、こうした燃料の原料となるエタノール、トウモロコシで全米トップの生産を誇るアイオワ州での選挙集会で今回の方針転換を強調した。

 今回の規制撤廃は、農業分野の関税で打撃を被っているトウモロコシ生産農家をなだめるもので、選挙戦で接戦を強いられている中西部の共和党候補の追い風になるとみられている。

 また、共和党のアイオワ州のレイノルズ知事やデービッド・ヤング下院議員にとっても、政策変更の実現に寄与したとの実績が得られた。2人は共に選挙戦で厳しい情勢にあり、「E15」の通年販売を認めるようトランプ大統領に求めていた。

 トランプ大統領の今回の動きは11月の中間選挙を控え地元有権者に高揚感を与える可能性があるが、E15に関してすぐに利益がもたらされるわけではない。規則変更の完了に向けEPAは今後、数カ月かけて正式な規則を策定する。その後も先行き不透明な状況がさらに数年続く可能性がある。

 議会のあらたな承認がなければ、EPAにはE15に関して大気汚染規制への適用を免除する法的権限がないと、反対派が主張して訴訟を起こす構えを示している。



日刊工業新聞 2018/10/10 14:00
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