米大手通信会社のネットワークで、スーパーマイクロ・コンピューターが供給したハードウエアの中にハッキングを可能にするチップが見つかり、8月に除去されたと、この通信会社から委託を受けたセキュリティー専門家が明らかにした。米国向けに生産されたテクノロジー部品が中国で不正に手を加えられたことを示す新たな証拠となる。

 ブルームバーグ・ビジネスウィークは今月、スーパーマイクロの中国下請け業者が2015年までの2年間、中国情報当局の指示により、サーバー向けマザーボードに問題のチップを埋め込んでいたと報じている。通信会社から委託されたヨッシ・アップルバウム氏はこのほど、チップ発見に関する文書や分析、その他の証拠を提供した。

 アップルバウム氏はかつてイスラエル軍情報機関のテクノロジー部隊に所属、現在は米メリーランド州に本拠を構えるセピオ・システムズの共同最高経営責任者(CEO)を務める。同社はハードウエアのセキュリティーを専門とし、通信会社の大型データセンター数カ所の調査に起用された。アップルバウム氏は顧客と秘密保持契約を結んでいるため、ブルームバーグは問題が見つかった企業の名称を明かさない方針。

 アップルバウム氏によると、スーパーマイクロ製サーバーで異常な通信が見つかり、サーバーを綿密に調査した結果、ネットワークケーブルをコンピューターに接続するサーバーのイーサネットコネクタに問題のチップが埋め込まれているのを発見した。

 同氏は別の複数企業が中国の下請け業者を使って製造したハードウエアの中にも、同じように手が加えられているのを見たことがあるとし、スーパーマイクロの製品だけではないと述べた。「スーパーマイクロは犠牲者だ。どの企業もそうだ」と同氏は語った。ハッキング用チップを仕込むことができる中国国内のサプライチェーンは数え切れないほどあり、発生カ所を特定するのはほぼ不可能な点が懸念だと指摘。「中国のサプライチェーンはそこが問題だ」と続けた。

 スーパーマイクロは「弊社は製造プロセスを通じて製品の完全性に注意を払っており、サプライチェーンのセキュリティーは業界にとって重要なテーマだ。未承認の部品について弊社は情報を得ておらず、顧客からもそのような部品が見つかったとの通知はない。ブルームバーグは限定的な情報しか提供せず、文書の提示もなく、新たな疑惑に回答するまで半日しか時間の猶予がなかったことに弊社は困惑している」と文書で回答した。

 ブルームバーグニュースはスーパーマイクロに対し、米東部時間8日午前9時23分に今回の記事についてコメントを要請。24時間内の回答を求めた。ワシントンの中国大使館にも同日にコメントを求めたが、返答はない。



日刊工業新聞 2018/10/10 12:30
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00491404