米国では最近、魔女の数が驚異的に増加している
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<米国では最近、魔女の数が驚異的に増加しているという。トランプ大統領やフェミニズムも関わるというその理由は...>

■ほうきには乗らないリアルな現代の魔女

魔女というと、ディズニー映画やハリー・ポッターなどファンタジーの世界の話であり、実在しないと考える人が日本では多いだろう。しかし米ニュースサイトのクオーツによると、米国では最近、魔女の数が驚異的に増加しているという。

ただし現代の魔女は、ほうきに乗って空を飛んだり、光る杖で魔法をかけたりといった姿とは少し異なるようだ。

まず、魔女は「ウィッカ」や「ドルイド」といった古い宗教と深い関係がある。これらはもともと、キリスト教が入ってくる前のケルト地方(今のアイルランドや英国の一部)で信仰されていた土着の宗教で、呪術などを行っていた。

20世紀に入り、ジェラルド・ガードナーという英国人がウィッカを現代に蘇らせた。米国で現在、魔女と結び付けられているのはこの現代版ウィッカとされているが、ドルイドを信仰する団体も米国内に複数あるようだ。なお、現代版ウィッカは1986年に、裁判によって正式に米国で宗教として認められている。

ウィッカ最大のウェブサイト「ザ・ケルティック・コネクション」によると、ウィッカは魔術とは必ずしも同義ではなく、「古代魔術の伝統をもとにした現代の宗教」というのが最も的確な説明だとしている。同サイトはまた、ウィッカでの魔術は「個人の自由な考えや意思を促し、地球と自然について学んだり理解したりすることで、生きとし生けるものすべてに神性を認める」ことだと説明している。

こうした魔術は「白魔術」でも「黒魔術」でもなく、「緑魔術」つまりグリーンで地球にやさしい魔術と呼ばれているようだ。

クオーツによると、こういった考えが、ヨガやマインドフルネス、瞑想などに傾倒していた米国のミレニアル世代(1980〜2000年前後に生まれた世代)を引きつけたようだ。

コネチカット州にあるトリニティカレッジが1990〜2008年の間に、宗教に関する大規模な調査を全米で3回行った。その結果、1990年には8000人だったウィッカ信仰者が、2008年には34万2000人に増加していた。さらに、ペーガン(多神教のことで、通常はキリスト教が入る前の土着の宗教を指す。調査では明記していないが、ドルイドが含まれる可能性もある)を信仰するという人も1990年当時は数字として現れていなかったが、2008年には34万人になっていた。

また、ピュー研究所が2014年に行った調査では、米国人のうち自分の宗教をウィッカまたはペーガンだとした人の割合は0.4%、100万〜150万人に達した。

■フェミニズムと魔女

英語で魔女を指す「Witch」という言葉は、時に魔女を表すだけでなく、女性を蔑む時にも使われる。しかし逆に、自らを魔女だと名乗る人たちは、それに対抗するかのようにフェミニストであることが多い、とクオーツは指摘する。

ヨーロッパのニュース専門チャンネル、ユーロニュース(電子版)は、トランプ大統領に対する反対運動や、性暴力被害を告発する動き「#MeToo」(私も)に触発されて、魔術を始める人が米国の若い世代の女性に多い、と伝えている。

17世紀に「セイラム魔女裁判」と呼ばれる魔女狩りが行われたマサチューセッツ州セイラムは現在、「ウィッチ・シティ」(魔女の街)と呼ばれている。そこで魔女として活動しているという女性はユーロニュースのインタビューに答え、「魔女は、ドナルド・トランプのような男性が恐れる存在」だと述べ、反トランプ運動に最適なシンボルだと語っている。ユーロニュースはさらに、米国の若い世代での宗教離れが魔女人気の高まりを後押ししていると指摘する。

英国のファッション雑誌グラシア(電子版)は2016年7月の記事の中で、宗教よりもスピリチュアルなものを信じ、ハリー・ポッターを読みながら育った世代でもあるミレニアルズたちにとって、伝統や保守的な考えに対抗する1つの表現法が魔女や魔術なのだと説明している。

(続きはソース)

Newsweekjapan 2018年10月10日(水)17時50分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11077.php