携帯事業者に値下げ命ずる法的権限、総務省になし 料金規制で慎重論強く
2018.10.11 06:15
 携帯電話料金の値下げに向け、総務省の議論が本格的にスタートした。しかし、総務省には料金を「値下げしろ」と携帯事業者に命ずる法的権限はない。2015年の安倍晋三首相の指示以降、値下げに向けたさまざまな手を打ってきたが、消費者はそれを実感できていないのが現状だ。料金規制は現実味を帯びてくるのか。

 総務省は10日、携帯電話市場の競争促進を図る有識者研究会の第1回会合を開催した。初会合では、携帯事業者や料金プランを自由に選択できる環境になっているかなどの論点が提示された。

 10日の研究会でも料金規制は論点に挙がったが、有識者の一人は「からめ手から攻めるしかない。まどろっこしいが」と規制に否定的だ。ただ、「からめ手の攻め手には限界がある」との見方が総務省内にあるのも事実だ。

 「競争を促進し、分かりやすく納得できる料金、サービスが実現されるように利用者の視点に立った議論を期待したい」

 菅義偉官房長官は10日の記者会見でもこう述べ、4割値下げの実現に向けた議論の進展に期待を込めた。菅氏は8月以降、無関係の沖縄県知事選も含めてさまざまな場で料金値下げについて持論を展開。「もうけすぎだ」と携帯事業者に苦言を呈し続けている。ただ、値下げに向けた具体策については語らないままだ。

 研究会でも料金規制は論点に挙げられ、「(携帯大手が格安スマートフォン事業者に回線などを貸し出す際の)接続料や消費者物価との比較などで(料金の)適正性を検証し、制度的に取り組むべき事項がないか検討することが必要では」と資料に明記された。携帯大手は、格安スマホ事業者に高い接続料の支払いを求めて事業を圧迫しているのに、携帯料金が高いままなら料金を規制する制度も検証すべきではないか、というわけだ。

 しかし、有識者は「携帯事業者は直接、利用者に害を生じさせているわけではなく、法規制は現実的ではない」と話す。また総務省幹部も「検討する論点に入れたが現実的ではないだろう」と料金規制に及び腰だ。

 通信行政は1985年の電気通信事業法施行以来、2004年には電話料金の事前規制を撤廃するなど自由化と規制緩和を繰り返してきており、規制を強めるのは時代に逆行することになる。

 一方で、同じ総務省内で、ふるさと納税の返礼品については、批判を受けながらも法規制に向けた検討が進んでいるのも事実だ。菅氏や総務省がどういう手を打ち出すのか。関係者は固唾をのんで見守っている。(大坪玲央)

https://www.sankeibiz.jp/smp/macro/news/181011/mca1810110500008-s2.htm