JR東日本の快速列車「ホームライナー」を巡る動向が、SNSをにぎわせている。数百円を上乗せすれば、定期券客も特急車両に座って帰れる。通勤客にとってはありがたい列車が、特急に格上げされるかもしれないというのだ。

◆発車2分前には「満席」

 水曜の午後6時25分。JR東京駅の東海道線ホームに、6時30分発の小田原行き「湘南ライナー1号」が滑り込んできた。特急「踊り子」に使われている車両だが、運行上は快速列車だ。7、8号車の前で見ていると、ライナー券(510円)を駅員に示した人が次々に車内へ。3分後、ホーム上の券売機には「売り切れました」という赤い文字が現れ、定刻に出発した。この時、ホーム上の集合場所には既に、7時発の「湘南ライナー3号」に乗る人たちが並び始めていた。
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 JRのホームライナーの歴史は、30年以上前にさかのぼる。終着駅で客を降ろした特急車両は、夜、空っぽのまま車庫へ戻る。これを有効活用できないか――。後のJR東海社長・須田寛氏が考案し、国鉄末期の1984年、上野―大宮で始まった。

 「コーヒー1杯の値段(300円)を上乗せすれば定期券客も特急車両に座れ、しかも速い」と、通勤客は大歓迎。赤字国鉄にとっても増収につながるため、たちまち全国へ広がった。JRに引き継がれた旧国鉄の旅客営業規則は、特急券や指定券が要る列車に、定期券では乗れないと定めている。そこで現場担当者は、座席を指定しない「着席券」という概念を引っ張り出し、実現にこぎつけた。
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◆私鉄にも続々登場

 「座って帰れる」が魅力の通勤客向け座席指定列車は、今や私鉄でも定番になっている。今年だけでも、西武鉄道(西武新宿―拝島)と京王電鉄(新宿―橋本、京王八王子)が新たに始めた。夜の下り列車が「疲れた体にありがたい」「読書など移動時間を有効に使える」などと好評で、朝の上り列車に拡大させた鉄道会社(京浜急行電鉄など)もある。確実に座るため上乗せされる料金は、300〜400円が主流だ。

 旧国鉄時代から、定期券で特急に乗れる例外規定はあった。乗れる範囲は次第に拡大。今や、「定期券で乗れない特急は一部」(JR東日本広報部)という状態となっている。

 定期券で特急に乗れるのは便利だが、当然ながら特急券がいる。利用者にとっては、割安のライナー券のほうが良いに決まっている。

◆「特急格上げ?」の疑心暗鬼

 JR東日本は現在、中央・青梅線(東京―高尾、青梅)に「中央ライナー」「青梅ライナー」、東海道線(東京―小田原)に「湘南ライナー」、湘南新宿ライン(新宿―小田原)に「ホームライナー小田原」、総武線(東京、新宿―千葉)に「ホームライナー千葉」を、それぞれ走らせている。各路線とも1日あたり複数本、中でも湘南ライナーは最も多い9本運行されている。

 これらのうち一部が近い将来、特急に格上げされるのではないか――という疑心暗鬼の声が、このところSNS上でにぎやかだ。

 「湘南ライナーもなんだか特急格上げで消滅しそうな気配が……」

 「中央ライナーと青梅ライナーが特急格上げ?」

 「特急になると、青春18きっぷで乗れなくなる」

 団体列車の企画などを手がける旅行会社を経営し、「青春18きっぷ完全攻略ガイド」(イカロス出版)などの著書がある中尾一樹さんは「SNS上の指摘は単なる臆測でなく、根拠がいくつかある」と説明する。

 うち一つは、JR東日本が最近、「おだわら」「おうめ」「はちおうじ」など5件を商標登録すべく特許庁へ申請したこと。湘南ライナーなどを格上げした特急の愛称に使うためでは、と推測したくなる。

 加えて、特急と掛け持ちのホームライナー用車両は、軒並み古くなっている。中央線の特急「あずさ」「かいじ」(新宿―松本、甲府など)に2001年から使われているE257系は7月から順次、新しいE353系への置き換えが進む。E257系は改修後、東海道線などで使われる予定。特急「踊り子」(東京―伊豆急下田など)には、旧国鉄時代の1980年代に造られた185系が、改修されながら今も現役だ。中尾さんは「車両を新造する費用の一部を、特急格上げに伴う増収分で賄う狙いがあるのでは」とみる。

以下見出しのみ 全文はソース先で

◆高崎線などに格上げの先例

◆利用者負担は2倍に

10/12(金) 7:05
読売新聞(ヨミウリオンライン)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181012-00010000-yomonline-life&;p=1