半藤一利・出口治明 幕末・明治の人物の評価  対談

伊藤博文
●出口=伊藤は大した力量がなかったからこそ、大久保が生前に考えていたことをそのまま忠実に実行していったのではないでしょうか。伊藤は、亡き大久保が描いた夢を思い出しながらひとつずつ実現していったのだと思います。
●半藤=伊藤博文には坂本龍馬的なところがありますからね。自分には新しいアイデアはないけれど、人の考えたことを実行する能力は高かったのでしょう。折衝の能力もあった。だから一応は大久保の描いた設計図を思い出しながらやっていったのだと思います」。
山県有朋
「●半藤=彼(山縣)が、大久保の設計図よりも先に、自分の思い描いた軍事国家を作ってしまったんです。これが近代日本の不幸の始まりなんですよ」

「●半藤=残された伊藤や山縣は、急に天下を取ってしまったものだから、自分たちの権力を正当化するために『明治維新』なる言葉を探してきました。
吉田松陰という、私にいわせれば大したことのない人物を称揚するようになったのも、長州閥の自分たちを権威づけるためですよ。●出口=なるほど、松陰はそこで理想化されたわけですか。
大久保という後ろ盾を失ったので、吉田松陰の威光にすがったということでしょうか。●半藤=そのとおりです。伊藤も山縣もそのままでは誰も信用しないから(笑)