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U ・ω・) ムッ、『西成ダンジョン』というタイトルがひらめいた。
西成の日雇いおっさんたちが一攫千金と家族との復縁を夢見てダンジョンに潜る
切なく猛々しい物語だ。

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「漁師はな、板子一枚下は地獄だ、なんつうけど。
 ワシらにとってはな、このばかでけえダンジョンがさ、一攫千金の夢がつまった地獄なんだべな」
こう語り始めた西山さんは驚くほど活き活きとしている。
……先ほどまでの人生を半場投げ出したような態度とは、まるで人が変わったようだ。
震えているアル中が酒をあおると途端にシャンとするように、
おそらくは……西山さんもこのダンジョンの中毒になっている。
「おい邪魔や!どけ!」
いきなり怒声とともに二人の男が担架を運んできた。
私は道をよけつつ横目で担架に乗せられた人をチラと覗き見る。
その血まみれの中年男性の胴体には……巨大な斧が、めり込んでいた。
「アレなら死なね、でぇじょうぶだッ」
吐き捨てる様に言った西山さんは、備え付けられた投光器が照らし出す煌々とした巨大なダンジョンの入り口から
既に一寸たりとも目を離さず……誘蛾灯に舞う蛾の如く、吸い寄せられる様な早足で近づいていく……。

――人を引き付けて止まない『西成ダンジョン』
これより潜入レポを開始する。
私が生きて帰れるよう、誰か……祈ってくれ。
                       
           『西成ダンジョン』 冒頭より抜粋