気候変動でビール不足の時代到来? 国際オオムギ研究
2018年10月16日 13:48
発信地:パリ/フランス [ フランス ヨーロッパ ]
【10月16日 AFP】忙しかった一日の終わりにビール1杯(もしくは2杯)が欠かせないという人は、気をしっかり持って聞いてほしい。気候変動が原因で、お気に入り銘柄のビールがいっそう不足し、価格も高くなる日が間近に迫っている。
15日に発表された研究論文によると、熱波と干ばつが深刻化している現在の傾向が続けば、大半のビールの主原料であるオオムギの収穫高の急減が今後、周期的に発生するという。
論文の主執筆者で、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)の关大博(Dabo Guan)教授(気候変動経済学)は「オオムギの世界供給量が減少するとそれに比例して、ビール原料用のオオムギはさらに大幅に減少する」と説明する。
オオムギのうち大半は食品原料として使用される。ビール原料として使われるのは最高品質のもののみで、全体の20%足らずだ。
关教授は、AFPの取材に「高品質のオオムギは、気候変動に関連する極端な気象現象の影響を受けやすい」と語った。
关教授と国際研究チームが英科学誌「ネイチャー・プランツ(Nature Plants)」に発表した論文によると、極端気象現象の発生時には、世界のビール消費量が16%減る、すなわち300億リットル近く減少するという。これは米国の年間ビール消費量に匹敵する。またそうした破壊的な天候事象の後には、ビールの価格は平均2倍ほど高くなるという。
ビールは世界でも群を抜いて多く消費されているアルコール飲料で、2017年の世界生産量は2000億リットル近くに上っている。
■落ち着こう、ビールでも飲んで
关教授と研究チームは、温室効果ガス排出量が大幅に削減された場合から「現状維持」に至るまで、さまざまな未来の気候シナリオを描き、それらの下で発生する極端な気象現象が、最も重要な世界34か所のオオムギ栽培地域の収穫高に及ぼす影響を予測した。
「異常気象年」は、地球温暖化が始まる前の100年に1度の事象よりも厳しい熱波と干ばつの両方が、オオムギの栽培地域で生育期に発生する年として定義された。
そして2010年から今世紀末までに、人類が地球温暖化の気温上昇幅を2度未満に抑えることに成功する場合には、このような極端気象現象が17回、炭素汚染が現在のペースで続く場合には139回、それぞれ発生することを研究チームは明らかにした。
研究の次の段階では、「オオムギの供給ショック」が各地域のビールの生産量と価格にどう影響するかを評価した。
気候変動によって混乱した世界では、コムギ、トウモロコシ、ダイズ、コメなどの主要穀物の収穫高と栄養価が減少すると予測されるため、オオムギをビール原料ではなく食物源の一つとして利用すべきだという圧力が高まる可能性が高い。关教授は、「気候変動は『ぜいたく』品の可用性、供給安定性、入手容易性などを損なう可能性がある」という。
だが同時に「文化の枠を超えたビールを好む傾向」は根強く広く行き渡っているとも、关教授は指摘する。「世界中の何百万という人々にとって、ビールの可用性と価格に気候の影響が及べば、踏んだり蹴ったりの事態をもたらすに違いない」。ことわざにあるように「今は楽しくても、いつかはビールが底を突く」のだ。
オオムギのトップ輸出国はオーストラリア、フランス、ロシア、ウクライナ、アルゼンチンで、その他多くの欧州諸国が上位20か国に名を連ねている。
一方、オオムギ輸入国の上位は中国、サウジアラビア、イランで、その後に小差でオランダ、ベルギー、日本の醸造3大国が続いている。(c)AFP/Marlowe HOOD