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エ なお,原告は,被告Bは原告の名誉を毀損する害意や女性差別の視点をも
って本件項目を執筆したのであるから,これに対しては制裁的慰謝料を課す
べきであり,これが否定されるとしても,これらの害意や差別的視点を有する
ことを慰謝料算定の重要な要素として考慮すべきであると主張しているので
判断する。
  通常,名誉毀損行為によって生じた損害の賠償は,行為者及び被害者,双
方の一切の事情を総合的に斟酌して判断,算定されるものであるから,加害
者が積極的に第三者の名誉を侵害する意図の下に名誉毀損行為を行ったこ
とが認められる場合には,このような主観的側面は,当然に損害額の算定に
際して考慮されるべき要素となる。現に被告Bが執筆した本件記載部分には
原告に対する敵意さえ感じさせるものもあることは,既に認定したとおりであ
る。しかしながら,英米法でみられるような制裁的慰謝料(懲罰的損害賠償)
の制度は,我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則と相
いれないものと考えられるから(最高裁第2小法廷平成9年7月11日判決・民
集51巻6号2576頁),本件について,被告らに対してこのような制裁的慰謝
料(懲罰的損害賠償)を課すべきだとする原告の主張を採用することはできな
い。