緊急地震速報に驚いた人もいただろう――。2日、紀伊半島と四国の間の海域「紀伊水道」を震源として発生した震度4(M5.4)の地震。被害がなかったからといって、「大したことはない」と考えるのは早計である。南海トラフ地震の“予兆”かもしれないからだ。

立命館大学環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏(災害リスクマネジメント)は、「2020年までに南海トラフ地震が発生する確率は極めて高い」として、こう警鐘を鳴らす。

「近年、西日本を中心に大きな地震が多発しています。例えば、2016年4月の熊本地震や同年10月の鳥取中部地震、今年4月の島根西部地震や6月の大阪北部地震などです。これらは、南海トラフの予兆だと考えられます。前回の昭和南海地震(1946年)の前にも、3年続けて大きな地震が発生していたからです」

■トヨタは代替ルートを確保

政府の「地震調査研究推進本部」によると、M8〜M9クラスの南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は、70〜80%。いつ巨大地震が起こってもおかしくないばかりか、今年に入って、紀伊水道を震源とする地震は15回も発生している。昨年の7回と比べ、今年は倍以上だ。

「今年の4月から、愛知県東部や三重県南部、和歌山県南部などで地震が頻発しています。それらは、南海トラフ地震が近くなると起きる内陸直下型の地震です。政府が試算している発生確率80%は『必ず起きる』に等しい数字ですが、南海トラフ地震が『30年後』に起こると言っているわけではありません。だからこそ、明日にでも起こると思って、安全な避難場所と経路を日頃から確認しておくことが大切です」(高橋学氏)

例えば、愛知に本拠を置く自動車メーカーのトヨタは、巨大地震対策に余念がない。トヨタは昨年10月、南海トラフ地震などで太平洋側の港が被災した場合を想定し、代替の輸送ルート確保のために福井の敦賀港で実証実験を行っている。

このように一部の企業が巨大地震に備えている一方、「政府や自治体のつくるハザードマップなどは気休めにしかならない」(高橋学氏)という。

地震が起き、津波が来てからオロオロしていたのでは手遅れ。自分の住んでいる土地の地盤を確認したり、非常食などを用意したり、最低限の防災対策をした方がいい。

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