ハローワークの非正規職員に配布される任用条件が記された書類。「自動的に再採用は行わない」、公募によらない再採用は「2回を限度」と記されている
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求職者を支えるハローワークで、非正規職員の事実上の雇い止めが横行している
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「ハローワークの非正規職員たちは、雇い止めにおびえながら働いています」。約10年間勤めたハローワーク(公共職業安定所)での相談業務の仕事を突然失ったという男性が、特命取材班にメッセージを寄せた。国の機関で働く非正規職員の多くは、3年に1回は公募試験を受け直さなければならないという独特のルールが当てはめられ、事実上の雇い止めが横行しているという。求職者を支える職員自身が不安定な雇用に悩まされるとは−。背景を探った。

待ち合わせの喫茶店に現れた男性は、やつれた表情で切り出した。「名刺がなくてすみません」。昨年3月に雇い止めに遭い、新しい仕事は見つかっていない。失職のショックで心療内科に通っているという。

男性はハローワークで、非正規の相談員として求職者への職業紹介や面接・書類作成のアドバイスなどを担当してきた。見せてくれたのは、求職支援をした人たちからのお礼の手紙。「アドバイスしていただき、不安を自信に変えるパワーになりました! 新しい職場で頑張ります」。指導を受けるような大きなミスをしたことはない。男性は「やりがいのある仕事を続けたかったのに、なんでこんな目に遭わないといけないのか」と肩を落とした。

ハローワークで働く非正規職員の多くは「期間業務職員」として採用される。任期は1年で、更新は原則2回まで。勤続を希望する場合は3年に1回、ハローワークに掲示される求人案内に応募し、試験を受け直す必要がある。

このため、同僚の職員や、自身が支援を担当する一般の求職者らとも公募試験で競い合うことになる。男性は「公募の春が近づくと、対象の職員たちは不安で仕事が手に付かなくなる。ハローワークは『職業不安定所』でした」と話した。

「非正規の国家公務員」である期間業務職員は、本来は短期間の臨時業務を対象としている。人事院によると、ハローワークの相談員のように専門知識を要する恒常的な業務は想定していないという。いびつな任用制度が続けば職を求める国民にも不利益が生じかねないが、国家公務員の人事制度を担当する人事院にも、ハローワークを所管する厚生労働省にも、改善する姿勢は見られない。

厚労省によると、「派遣切り」などで求職者が相次いだ2008年のリーマン・ショック後にハローワークの態勢が強化され、非正規職員の数は11年度には約2万1千人まで増えた。景気回復に伴って15年度には約1万5千人に減少。労働行政の中で非正規職員は「雇用の調整弁」のように扱われた。

ハローワークの非正規職員の任用条件を記した書類には「自動的に再採用は行わない」と明記。任期は1年で更新は原則2回までとされ、3年に1回は公募試験を受けなければならない。九州の厚労省関係者は「今でも理由すら告げられずに雇い止めされる(公募で不採用になる)事態は相次いでいる」と言う。

全国のハローワークなどで働く職員でつくる「全労働省労働組合」は、非正規職員らの訴えを文書にまとめている。「自分の雇用が不安定で、メンタルを整えながら求職者の相談に応じることはとても苦しく、涙が出そうになることもある」「相談業務には高い専門知識やカウンセリング技術などが不可欠。(3年に1回の公募は)業務の特殊性を見ないばかりか利用者を無視した取り扱いだ」−。

こうした声に政府はどう向き合うのか。人事院人材局企画課は「期間業務職員は、1年ほどで終わるプロジェクトを臨時的に任せるために作られた人事制度。(厚労省が)ハローワークの相談業務に適用していること自体が問題ではないか」と指摘する。

一方の厚労省公共職業安定所運営企画室は「景気動向によって需要が変動するハローワークで、多くの職員を長期的に任用するのは難しい。雇い止めとの批判は認識しているが、あくまで人事院の規則に従って運用している」と説明。互いに責任を押し付け合っているように

以下ソース先で

2018年11月07日 06時00分  西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/anatoku/article/463563/