京阪バスが管理や運行を受託している京都市バス(7日午後4時半、南区・九条営業所)
https://www.kyoto-np.co.jp/picture/2018/11/201811081231031108basuu.jpg

 京阪バス(京都市南区)が京都市バスの受託から撤退する方針を固めたことで、市交通局が長年進めてきた民間委託路線は転機を迎えそうだ。近年は運転手らの人手不足などを背景に他の民間バス会社からの応募も減っている。交通局の運転手は民間より人件費が高いことなどから、委託を直営に戻すと経費がかさむ。周辺部の赤字路線が維持できなくなり、市民の足を守ることが難しくなる局面も予想される。

■赤字路線を民間委託

 市バスは乗客数の減少で2002年度まで10年連続で赤字決算が続いていた。そのため、交通局は経営改革として民間委託や人員削減を進めてきた。交通局の運転手は00年度の1338人から12年度に680人に縮小し、整備士も00年度の129人から100人以上減らした。給与も順次引き下げた。こうして乗客が多い中心部や近年好調な観光路線を直営で維持する一方、周辺部の赤字路線は民間委託し、住民の生活路線を維持してきた。国が関与する「経営健全化団体」も13年度に脱却した。

 民間にとってもメリットがあった。07年度から西賀茂営業所(北区)、14年度から錦林出張所(左京区)を受託する京都バスは「乗客数の多い少ないにかかわらず必要経費と一定の利益を含む委託料を受け取れるため、安定経営につながる」という。

 しかし、民間バス会社にとって人手不足は予想以上に深刻で、状況が変わった。

 バス運転手になるために必要な大型2種免許の保有者数は17年で91万9000人。過去10年で18万人減った。京都府内も同じ傾向で、約1万9000人と約4200人減った。整備士が少ない状況も同じで「若者の車離れもあり、作業が大変な大型車では不足気味」(日本自動車整備振興会連合会)という。

■委託制度そのものに課題

 交通局が採用する「管理の受委託方式」自体が成り立たなくなりつつあるという指摘もある。京阪バスの鈴木一也社長は「民間会社が契約更新の際に選定から落ちると、担当の運転手らが大量に余る」と制度の問題点を挙げる。

 交通局の民間委託料はこれまで年間約50億円だったが、19年度は、京阪バスに1年間の延長を依頼する上、他社についても人件費アップの要望を受けて引き上げるため5億円以上増える見込みだ。

 京阪バスの動きが他社にも広がり、直営に戻す路線が増えればさらに経費が膨らむ。交通局の山本耕治管理者は「民間運転手との給与差はまだあり、受委託制度を続けるメリットはある」とした上で「周辺部も含めて現路線を維持できるよう、黒字路線を増やして収入アップを図る」と強調するが、民間委託でコストを削減する経営モデルは見直しを迫られる可能性が高い。

京都新聞 2018年11月08日 12時32分
https://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20181108000054