中国乗員の実態
罰則:

ハードランディングをすると罰金が課せられる、避雷すると一時的に乗務を降ろされる、
これらに関しては上記の事象が発生した際にはQAR データを解析して、
パイロットミスだと判断された場合には処分が下されるそうです。
QAR データの罰則目的とした使用は本来あってはならず、この点では世界基準では無さそうです。
公正な文化(Just Culture)はCAAC には一定の理解があるものの、航空会社の上層部は全く理解していないため、
理不尽な罰則基準が存在しているとのことでした。

外国籍乗員特例:
外国籍乗員が乗り込む場合にはフライトプランにその記載がある為、国内のATC は英語で行われます。
そして大手の航空会社では、英語をある程度話すことのできる乗員とのペアリングでしか
スケジュールを組まないようです。(中国のパイロットのほとんどはICAO 英語レベル4 を取得しているそうです。)
更に軍との関係で、外国籍乗員には飛行の出来ない航空路や就航できない空港が存在します。

身体検査:

中国の身体検査基準は軍隊基準を元にしており、世界で最も厳しいものだと言われています。
その為、現役で飛んでいる外国籍乗員が採用される際の検査はCT スキャンやMRI も含まれ、
約3 割の人は身体検査基準を満たさないようです。そして入社後、航空身体検査は40 歳以上だと年2 回受けなければなりません。しかし

賃金

最も気になる賃金体系ですが、国営会社3 社(Air China、China Southern、China Eastern)と
成長の著しい民間会社によっても差があり、更に働き方によっても賃金は変動します。
例として A320/B737 の外国籍契約機長の賃金体系です。(全て手取りの年収です。)
フルタイム(年間 30 日有給): $268,000(2,948 万円)
6 週間勤務/2 週間休暇: $244,000(2,684 万円)
2 ヶ月勤務/2 ヶ月休暇: $150,000(1,441 万円)
これらに加え、住宅手当が月6 万円、通勤補助が月6 万円等の福利厚生を提供しています。
比較として、日本で採用しているB767 外国籍機長のフルタイムの額面年収は$206,616(2,272 万円)です。

最後に

単純に国内の賃金と比較すると、中国で働くことで得られる収入の差は大きい思われますが、
デメリットとして、仮採用後の約1 年間は操縦機会が無くなること、
中国でのATPL 取得(外国籍乗員の合格率5 割)、年金制度、福利厚生、健康保険は含まれておらず、
定年60 歳(一部63 歳)までの間の厳しい身体検査や罰則制度、そして3 年間の契約でいつ解雇にというリスクもあります。
乗員不足は世界中ほとんどの国で深刻となっていることは事実です。
売り手市場となっているパイロットの価値を日本国内でも高める働きを各組合で取り組むことは必須だと考えています