76の国と8万人を対象とした調査により、国の豊かさを繁栄する指標の一つ「GDP」が高く、男女平等の考え方が広まっている国ほど、男性と女性の間に存在する考え方の違いが大きくなるという研究結果が発表されました。今後さらに詳細な調査が必要とされる段階ではあるものの、自由度が高まるほど男女それぞれが自分らしい考え方を持って行動できるようになることを示す結果として注目されています。

この調査を行ったのはボン大学のアーミン・フォーク経済学教授と、カリフォルニア大学バークレー校のヨハネス・ヘルメル経済学博士による研究チーム。二人は、国家の富とジェンダーの平等が社会的要因に関する「選択」にどのように影響するかを調査しました。

調査においては、76カ国を「GDP」と「男女平等性」の指標で4つのグループに分け、それぞれの国で男女間に存在する考え方の差異性と関連付けてマッピングしてその分布を見ています。この時、「男女間で考え方の差異がない」ということは「男女が同じような考え方を持つに至っている」、すなわち「特に女性が男性社会に考え方を合わせることを暗に強要されている」ということを意味しています。

以下のグラフでは、「リスクを取ること」(ピンク色)、「他者に対するネガティブな対応」(オレンジ色)、「利他主義」(黄緑色)、「信頼」(緑)、「他者に対するポジティブな対応」(青)、「忍耐強さ」(紫)の6つの要素における男女の違いの大きさがグラフの高さで示されています。左のグラフは男女間の考え方の差異(縦軸)とGDPの規模(横軸)を示したもので、右のグラフは横軸を男女平等性に置き換えたもの。いずれも、全体的な傾向としてGDPの向上および男女平等性が高まって「住みやすくなる」ほど、男女の考え方には差異が強くなることが示されています。

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その違いを国別に細かくプロットしたのが以下のグラフ。横軸はGDPの規模、縦軸は男女間の考え方の差異を示しており、カナダやアメリカ、イギリスなど男女間の差異が強いほどグラフの右上に、逆にガーナやイラク、タンザニアなど男女間の差異が小さい国ほど、グラフの左下に偏って分布している状況が見てとれます。

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この傾向は、横軸を男女平等性に置き換えたグラフでも同様に見てとれます。

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この結果からは、国が住みよくなるほど男女はそれぞれ「らしさ」を発揮して自由な選択を行う環境が構築されていることを示唆するものであるといえそう。ただしその一方で、ミネアポリス連邦準備銀行の財務アドバイザーで研究には関与していないアレッサンドラ・フォグリ氏が指摘するように、各国で取られたデータの偏りをより正確に考慮することも重要。特に、調査に参加した世代は青年期の若者から90歳代の高齢者までバラバラになっており、その世代間で見られる差異が今回の研究では正確に反映されていない可能性が指摘されています。

ヘルメル氏は、今回の研究で明らかにされた点は「男女の違いとGDPおよび平等性の関係には、あるパターンがある」ということであり、今後さらなる研究が求められると述べています。さらにヘルメル氏は、この成果によって自分たちが「社会的要因に対する進化論的および生物学的な説明を支持するものではない」という点を強調しているとのこと。「最も大きな誤解は、この結果が『社会的、またはジェンダー的な役割は男女間に存在する差異の形成には関与していない』と考えることです」と述べ、この複雑なトピックに対するより詳細な継続研究が重要であることを述べています。

https://gigazine.net/news/20181107-good-time-gender-gap-grow/