日本テレビの人気バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」に、やらせ疑惑が浮上した。

 テレビ界ではたびたび、事実をねじ曲げるなどのやらせが問題になってきた。疑惑が事実だとすれば、視聴者の信頼を大きく裏切る行為だ。

 問題になっているのは、芸人が世界の祭りを体験する番組内の企画だ。週刊文春が、ラオスとタイの祭りを「でっち上げ」などと報じた。

 日テレは当初、疑惑を否定したが、15日になって「疑念や心配を掛ける事態」になったと謝罪した。企画の当面の休止も発表した。

 番組の意向で現地のコーディネート会社が実質的な主催者となってイベントとして開催したケースがあったことを明らかにした。しかし、やらせの意図はなかったという。

 番組は日曜夜の放送で、家族そろって楽しめるとして人気がある。芸人が本気でぶつかる姿が共感を呼んでいる。昨年は放送文化の向上に貢献したとして、ギャラクシー賞テレビ部門特別賞を受けた。

 それだけに、子どもたちにも誤った情報を伝えていたのだとしたら責任は重い。

 企画には「祭り」という、海外の伝統や文化を紹介する側面もあった。それを正しく伝えていなかったとしたら、他国への敬意を欠いたと受け取られても仕方がない。

 報道や情報番組とは違い、バラエティー番組では演出とやらせの線引きが難しい。

 そのなかで、2013年にフジテレビ系のバラエティー番組でやらせ問題が起こった際、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は「バラエティーが『虚構』を楽しむものであったとしても、『放送界の感性が、一般社会の倫理観と乖離(かいり)していないか』は極めて重要な問い」との意見を公表した。番組制作者は、改めて心に留めるべきだ。

 インターネットに比べ、テレビは公共性が高い。たとえバラエティーであっても、面白ければ何をしてもいいというわけではないだろう。

 今回の件は、放送倫理検証委も日テレに報告書の提出を求めている。日テレも111本の過去放送分について調査している。

 徹底した事実の究明と、速やかな結果の公表が不可欠だ。

毎日新聞2018年11月18日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20181118/ddm/005/070/025000c

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