橋下徹への最高裁判決
裁判官竹内行夫の補足意見
請求の方式について,弁護士法は、「その事由の説を添えて」と定めているだけであり,その他に格別の方式を要求していることはない。
仮に,懲戒請求を実質的に制限するような手続方式を要求するようなことがあれば,
それは何人でも懲戒請求ができるとしたことの趣旨に反することとなろう。
また,「懲戒の事由があると思料するとき」とはいかなる場合かという点については,
懲戒請求が何人に認められていることの趣旨及び懲戒請求は懲戒審査手続の端緒にすぎないこと,
並びに,綱紀委員会による調査が前置されていること(後記)及び綱紀委員会と懲戒委員会では
職権により関係資料が収集されることに鑑みると,
懲戒請求者においては,懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠なく
懲戒請求をすることは許されないとして,
一般の懲戒請求者に対し て上記の相当な根拠につき高度の調査,検討を求めるようなことは,
懲戒請求を萎縮させるのであり,
懲戒請求が広く一般の人に認められていることを基盤とする弁護士懲戒制度の目的に合致しないと考える。制度の趣旨からみて,
このように懲戒請求の「間口」を制約することには特に慎重でなければならず,
特段の制約 が認められるべきではない。
この点については,例えば本件のような刑事弁護に関する問題であるからとの理由で例外が設けられるのではない。
ところで,広く何人に対しても懲戒請求をすることが認められたことから,
現実には根拠のない懲戒請求や嫌がらせの懲戒請求がなされることが予想される。
そして,そうしたものの中には,民法709条による不法行為責任を問われるものも存在するであろう。
そこで,弁護士法においては,懲戒請求権の濫用により惹起される不利益、弊害を防ぐことを目的として,
懲戒委員会の審査に先立っての綱紀委員会による調査を前置する制度が設けられているのである。
現に,本件懲戒請求についても,広島弁護士会の綱紀委員会は,一括調査の結果,懲戒委員会に審査を求ないことを相当とする議決を行ったところである。
綱紀委員会の調査であっても、対象弁護士にとっては,社会的名誉、業務上の信用低下がもたらされる可能性があり,
また,陳述資料の提出等の負担を負うこともあるだろうが,これらは弁護士懲戒制度が自治的制度として機能するためには甘受することがやむを得ないとの側面があろう。

これほどの補足名文は最高裁判決ではめったに見られない