右派でも左派でもないことの限界―イエローベストに揺れるフランス(六辻彰二) - 個人 - Yahoo!ニュース
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パリ中心部でデモを行うイエローベスト(2018.12.1)(写真:ロイター/アフロ)
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12/2(日) 11:53

フランスのマクロン大統領はビジネス界向けの改革を推し進め、企業経営者からは高く評価されてきた。
しかし、それ以外からは不満が相次ぎ、右派と左派の垣根を超えた大規模なデモ、イエローベスト運動を招いた。
マクロン政権の窮地とイエローベストの台頭は、特定の勢力に偏りすぎた政治の危うさを物語る。
 「右派でも左派でもない」と強調し、政治への信頼を回復すると叫んで2017年に就任したマクロン大統領は、3週間続けてパリで発生した数十万人規模のデモとその暴徒化によって窮地に立たされている。この背景にはビジネス志向の急速な経済改革への不満があり、これは結果的に右派と左派の連携を生んでいる。

「革命とデモの国」の動揺
 「芸術と美食の国」であるフランスは「革命とデモの国」でもある。どちらも既成概念に囚われず、自らのセンスと意志で新たな境地を切り拓こうとする点で共通するが、11月半ばから毎週末発生してきた大規模デモは、さすがにデモに慣れたフランスにとっても大きな衝撃となった。

 11月17日、約30万人のデモ隊がパリを覆い、翌週末の24日には前回より少ない約10万人規模となったが、一部が暴徒化。大統領官邸(エリゼ宮)周辺で火を放ち、2人が死亡し、数多くの負傷者を出した。警察は3人の極右活動家を逮捕した。

 デモのきっかけは、燃料税の引き上げだった。マクロン大統領は地球温暖化対策としてエコカーの普及を目指しており、燃料税の引き上げはその一環だが、それまでの急激な改革(後述)に不満が募っていたなか、これが最後のひと押しになったのだ。

 大規模なデモに対して、マクロン大統領は政治活動の自由を擁護しながらも暴力を批判する声明を出し、さらに燃料税の引き上げが揺らぐことはないと力説した。その一方で、フィリップ首相が数回にわたってデモ関係者と会談して事態の収束を図ったが、合意には至らなかった。その結果、12月1日に3度目のデモが発生し、少なくとも16人が逮捕される事態になった。

イエローベストとは
 この大規模なデモの最大の特徴は、特定の党派や集団によるものではなく、さまざまな立場の参加者が、生活への不満と反マクロンで一致して参集したところにある。

 デモ参加者には2017年選挙でマクロン氏に対抗した右派の支持者が目立つが、一方で左派系の労働組合関係者も少なくなく、極右政党から極左政党に至るまで幅広い野党もこのデモを公式に支持している。さらに参加者の多くは地方在住者で、このデモには「都市に対する地方の反乱」としての顔もある。

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