7日成立が濃厚となった入管難民法改正案。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を急ぎ、来年4月の新在留資格創設を目指す理由に挙げるのが「深刻な人手不足」(安倍晋三首相)だ。だが受け入れ対象業種の一つである建設業には、当面の人手は足りていることを示す調査結果がある。「課題は長期的な人手不足への対応。早急な導入を求めているわけではない」。業界関係者からは生煮えのまま法案を通そうとする政府の姿勢に疑問の声が上がる。

国土交通省が全国3千の建設業者に毎月、アンケートする「建設労働需給調査」。10月時点で、3カ月後の人手確保の見通しを「困難」としたのは24・2%。「容易」は6・3%にとどまるが、最多は「普通」の62・4%だった。10月までの1年間の毎月の調査結果を見ても、「普通」が一貫して最も多い。

「一部に人手不足感はあるものの、すぐに工事がストップしたり、倒産が増えたりする切迫した状況にはない」。主なゼネコンでつくる日本建設業連合会(日建連)の永山貴一広報部長はこう語る。永山部長によれば、2015年の統計で、建設業の労働者数は10年以降横ばいが続く。一方で建設投資額は1996年度比で4割減っている。

国交省は、建設業が受け入れる外国人を来年度5千〜6千人、5年後には3万〜4万人と推計。根拠として、高齢労働者の引退や働き方改革の進展を挙げた。建設労働需給調査は考慮していないという。

長期的にみると、建設業の人手不足は避けられない。日建連の15年の推計では、建設技能労働者の4割が50歳以上。「10年以内に100万人規模の離職時代が到来する」とみる。ただ、その解決を外国人に求める声は多くない。

有識者でつくる国交省の中央建設業審議会小委員会は6月、「建設業の担い手確保策」などとして、長時間労働の是正や処遇改善など4点を取りまとめた。外国人労働者の受け入れは含まれておらず、同省が10月、全国各地で建設業者と開いた意見交換会でも、外国人労働者を求める声は少なかったという。

「建設業は危険を伴う現場が多く、日本語の理解は欠かせない。外国人労働者と言われても、ぴんとこない業者が多い」。約1万9千社でつくる全国建設業協会の牧角修技術顧問は首をひねる。

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