フランスは単独で米国巨大IT(情報技術)企業GAFAに2019年1月1日から課税
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11月半ばから、フランスは燃料税の引き上げを発端にした反政権デモ、黄色いベスト運動に揺れている。11日、マクロン大統領がテレビ演説で国民の購買力増加を目指す配慮措置を発表し、ようやく落ち着き始めた。筆者の親族、家族にも黄色いベストが数人おり、この1ヶ月間を通じて彼らの言動を観察して来たが、納得できない政策があったら抗議はしてみるものだとつくづく思った。

暴力行為があったのは遺憾だが、フランスの市民は、社会を変えて行くためには非合法的な行為も辞さない。いや、どこか「合法的なことばっかりやってても、何も変わらない。本気で怒らないとねえ」という暗黙の了解がある。だから、店が壊され、車が焼かれても、人が負傷しない限り市民は案外と醒めているのかもしれない。

以来、明らかに政府は態度を変え、今、そのポジティブな影響が出てきている。

GAFAに法人税課税

現在、米国の巨大IT(情報技術)企業、Google Apple Facebook Amazon(以下GAFA)はEU加盟国内に拠点を持たないため法人税を課税されていない。そこで、EU域内でも、GAFAの売り上げに対して一律3%の課税をしては?という議論が、今年3月からなされて来た。シンガポールやイギリスはすでに課税しているのだ。総額約50億ユーロの税収になる見込みなのに、なぜEU域内で課税しない?

しかし、12月4日のEU経済・財政理事会でEU加盟国は合意に至らなかった。自国産車がアメリカで売れなくなるなどの報復措置を恐れたドイツが尻込みしたからだ。そこで、フランスとドイツは、GoogleとFacebookの広告売り上げにだけ課税するという妥協案を提出してお茶を濁したのである。情けない……これでは13億ユーロにしかならない。

しかし、フランスは黄色いベスト運動がスローガンとして掲げた「税務上公正の要請」に応えなければ、もはや、国がひっくり返りそうな勢いである。

ここで幾らかでも国民に誠意を見せなければと思ったのか、17日のLes Echos紙のインタビューで、フィリップ首相は、「他の企業はすべて法人税を払っているのにGAFAだけが免税というのは不公平。EUレベルでの合意がなくても、フランスは単独でGAFAに来年1月1日から課税を実施する。1年で5億ユーロになる見込み」と発表した。庶民にセコく課税するより、こっちが先ですよ。これを皮切りに来年3月のEU経済・財政理事会でEU全体としての課税が合意されるといいのだが。

警察も黄色いベストに寝返る気配を見せ、昇給を確保

マクロン大統領は11日の演説の中で、「黄色いベスト運動の際に出動した警官には300ユーロ(約3万7000円)のボーナスを」と発表した。しかし警察の三大労働組合は、「はした金のボーナスくらいで誤魔化されたくないね。国を守ったのは誰だと思ってるんだ?」と黄色いベスト側に寝返る気配を見せ、昇給交渉に踏み切った。

彼らは、1ヶ月以上続いている黄色いベスト運動、そして今月11日にはストラスブールでのISテロでも出動し、休日返上しての連続勤務にもうヘトヘト。下記の映像(22日)を見ていただけばわかるように、今も黄色いベスト運動を続ける人の中には過激派もいるので、もはや、ただのデモというよリ一揆、蜂起、暴動と言って良いだろう。しかしこれだけ憎まれ、キックボードやらクリスマスツリーまで投げつけられている機動隊や警察といえど、実際は薄給で働く中産階級、腹の中では、黄色いベストの要求に賛成している人も多いはずだ。

17日、SGP-Police FO組合は1月のストを予告、Alliance Police national組合は19日に警察署を閉鎖し、電話に出ないようにと言い渡し、UNSA-Police組合は18日から、違反の取り締まりをサボタージュし最低限の労働しかしないと発表。この3つの組合は決してわずかなものではない。警察職員の80%を占める。

その結果、慌てた政府側は、19日、警察職員に対してこれまで不払いだった2億7500万ユーロ分の超過勤務費を払うことと、来年は平均して月額120ユーロの給料値上げを発表した。

やっぱり文句があったら言ってみるもの!

12/26(水) 7:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/puradonatsuki/20181226-00109033/