韓国ゲーム大手ネクソンが身売りへ

 韓国最大のゲーム業者であるネクソンが身売りを目指していることが3日までに分かった。

 ゲーム業界と投資銀行によると、ネクソンのオーナーである金正宙(キム・ジョンジュ)NXC代表と妻のユ・ジョンヒョン氏、個人保有の会社ワイズキッズは、保有するNXCの株式98.64%の売却に向け、ドイツ証券、モルガン・スタンレーを主幹事に選定した。NXCは日本のネクソンの株式47.48%を保有する持ち株会社であり、日本のネクソンは韓国のネクソンコリアの全株式を保有している。金代表はソウル大コンピューター工学科と韓国科学技術院(KAIST)の修士課程の出身で、26歳だった1994年にネクソンを起業した。NXCは「売却関連の事柄はいずれ情報開示する」と説明しており、社内は身売り推進を既成事実として受け止めている。

■売却額10兆ウォン以上予想

 ネクソンの売却額は10兆ウォン(約9600億円)を超えると予想されており、韓国のインターネット・ゲーム業界では過去最大の合併・買収(M&A)案件となる。東京株式市場に上場している日本のネクソンの株式時価総額は昨年12月末時点で1兆2600億円であり、NXCが保有する株式の時価だけで6兆5000億ウォンに迫る。さらにNXCが保有するノルウェーのベビーカーブランド「ストッケ」、韓国の仮想通貨取引所「コビット」、レゴブロックの取引サイト「ブリックリンク」や経営権に対するプレミアム(上乗せ分)を含めると、全体で企業価値は10兆ウォン以上になるとみられる。

 ゲーム業界は金代表がゲーム産業の成長が頭打ちとなる状況で、贈賄罪で起訴されるなどしたことから、身売りを決断したとみている。業界関係者によれば、金代表が日本のネクソンのオーウェン・マホニー社長やグローバル最高運営責任者のパク・チウォン氏らに経営の全権を委ねてから既に2年が過ぎた。業界では金代表が既にゲーム事業に対する経営意向を失っていると受け止めている。2015年に推進したNCソフト買収が不調に終わり、新たな成長動力を発掘できなかったことも一因に挙げられる。インターネット業界関係者は「金代表は現在のネクソンの規模では世界のゲーム業者との競争が不可能だと考えている」と指摘した。ネクソンの業績も下り坂だ。中国からのロイヤルティー(権利料)収入1兆ウォンを除けば、ゲーム事業部門と子会社の大部分は収益を上げられずにいる。

 ゲーム業界では、ネクソンがゲーム業界世界最大手の中国テンセント(騰訊)と売却交渉を行ったものの不調に終わり、公開売却に方針転換したともささやかれている。KKR、TPGといった世界的なプライベート・エクイティー(PE)ファンドも売却先の候補として挙がっており、日本のネクソンなどゲーム事業部分のみを売却する可能性も指摘されている。ネクソン関係者は「金代表は仮想通貨やブロックチェーンなどNXCの新事業に今も愛着を持っている」と話した。

■ゲーム業界「中国へ売却なら一大事」

 身売り報道を受け、京畿道板橋にあるネクソンコリアの社屋は終日ざわめいた。社員からは「どこが買うのか」「出勤を続けてよいものかどうか分からない」といった声が漏れた。ある社員は「政府がさまざまな規制を設けているのだから、自分がオーナーだとしても会社を売る」と話してため息をついた。

 ゲーム業界も韓国最大のゲーム業者が身売りを目指すことに衝撃を受けている。業界関係者は「創業者の金正宙氏は開発者スタイルの経営者というよりは、トレンドの変化を素早くキャッチし、多彩な分野に投資するスタイルだ。ネクソンの成長がピークを過ぎたと判断した可能性がある」と話した。別の業界関係者は「中国が買収すれば、韓国のゲームの競争力が急速に低下しかねない」と懸念した。

カン・ドンチョル記者 , イム・ギョンオプ記者

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