アップルのティム・クックCEOは1月2日、投資家向けの書簡を公開し、2019年第1四半期(2018年10月〜12月)の売上高が、昨年10月末に発表した予測を下回る見通しだと発表した。

アップルは以前の予測で売上高見通しを890億ドル〜930億ドルとしていたが、これを840億ドル(約8兆9800億円)へ引き下げた。
クックは売上不振の原因が、iPhone XS/XS Maxの発売タイミングのずれや、為替市場における米ドル高の影響、いくつかの市場における経済成長の減速にあると述べた。

ブルームバーグのMark Gurman記者は1月3日のツイッターの投稿でティム・クックが1月4日に緊急の社内会議を開催すると述べている。
クックはその場で、社員たちからの意見を募る意向だというが、アップルの現在の苦境が、クック自身が招いたものであることは明らかだ。

アップルはクックが指揮をとった8年間の間、iPhoneにわずか2つの大規模な刷新をもたらしただけだった。発売後の4世代に渡り継承されたiPhone 6と、2020年まで継承される見込みのiPhone Xの2モデルだ。

その他の機種としては、スティーブ・ジョブズが開発を指揮したiPhone 4シリーズにわずかな改変を加えたのみのiPhone 5や、iPhone Xを大型化させたPlus/Max/XRがあげられる。
また、iPhone 5の背面をプラスチック製に変えたiPhone 5Cもあったが、さほどの評価は得られなかった。

一方で、競合メーカーはアップルを上回るペースで新たな製品を送り出した。アップルが2020年に発売するiPhoneの機能は、サムスンの2018年の端末に先取りされた。
同社が誇らし気に披露したノッチは既に古びたものになり、中国の競合らは低価格ながらアップル製品を上回るクオリティの製品を市場に投入している。

アップルは端末の価格の引き上げに注力し、最上位モデルのiPhone XS Maxの米国での販売価格は1450ドルにも達している。これは、テック系サイトが選ぶ2018年のベスト機種に選ばれた、中国メーカーのOnePlusの6Tの3倍にも及ぶ価格だ。

ティム・クックが売上減少の大きな要因の一つとして、バッテリーの交換価格の引き下げをあげた点も興味深い。
古い端末に新しいバッテリーを導入したユーザーは、最新モデルに興味を示さず、そのまま使い続けるのだ。
アップルはかつて、旧機種のパフォーマンスを故意に低下させたことで非難を浴びており、同じ手法で買い替え需要を増大させることは難しい。

総じていえば、iPhoneを取り巻く状況は非常に困難なものになっている。2017年にリリースしたiPhone 8シリーズ及びiPhone Xの売上は、2016年のiPhone 7シリーズを下回った。
さらに、2018年のiPhone Xの後継機種3モデルも、前代未聞の値下げに踏み切る状況となった。

iPhoneの売上は現在、2012年以来で最低のレベルにまで落ち込んでいるが、アップルの苦境は今後も続いていく可能性が高い。
2019年に発売の最新モデルは、既に前年度の機種と同一のデザインとなることが確実で、5Gに対応せず、カメラ機能もこれまでのアップルの水準には及ばないものになりそうだ。そんな中で、唯一の希望といえそうなのが、指紋センサー復活の噂のみとなっている。

しかし、問題はiPhoneのみではない可能性もある。アップルは巨大になり過ぎ、莫大な資本力にあぐらをかくようになってしまった。
忠実なアップルファンが多すぎることも、イノベーションを阻害する要因になった。iPhoneの売上は当面の間、低調な状況が続くだろう。アップルがかつての栄光を取り戻すための道筋は、全く見えないのが現状だ。

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