【日曜に書く】「四島プラスα」こそ本筋だ 論説顧問・斎藤勉
https://www.sankei.com/column/news/190106/clm1901060003-n1.html
 安倍晋三政権はしかし、日本政府のソ連時代からの「四島返還」の基本的立場を大転換し、昨年11月のプーチン・ロシア大統領との
会談で「1956年の日ソ共同宣言を基礎にして平和条約交渉を加速させることで合意した」。56年宣言は「平和条約が締結されたあと、
色丹・歯舞の2島を日本側に引き渡す」と記している。2島の面積は四島全体の7%にすぎず、当時「平和条約」にならなかったのは
日本側が将来の四島返還に拘(こだわ)ったからだ。安倍政権は危うい「2島返還」路線へと大きく舵(かじ)を切ったと言わざるをえない。

 世界覇権への野望をあらわにしている中国封じ込めを日露平和条約交渉「加速」の理由に挙げる向きも多い。たとえそうであれ、
躍動的な地球儀俯瞰(ふかん)外交で国際的な存在感を増してきた安倍政権が自ら国家主権と国益を毀損(きそん)し、千載に禍根を
残すような拙速な決着に動き出したのだとしたら、残念至極である。