原因不明の難病で寝たきりだったロシアの少女が、新潟市の病院を受診したことで、まれな遺伝子異常とわかり、効果的な治療にたどり着いた。今では自分で座れるまでに症状が改善した。少女と来日した母親は「日本でやっと病気がわかった。娘の成長がうれしい」と語った。

 少女は、ロシア南西部アルマビルに住むビクトリア・ベリチさん(12)。国立病院機構・西新潟中央病院で年に1回の診察を受けるため、昨年11月27日に5度目の来日をし、12月11日まで滞在した。

 以前は座ることも言葉を発することもできなかったが、ベッドに腰掛けると、母のエリビーラさん(33)に「ママ」と呼びかけ、にっこり。「こんなに表情豊かになるなんて」と、主治医の小林悠さんは喜んだ。

 ビクトリアさんは、1歳半で原因不明のてんかん発作を起こすようになった。それでも2歳半までは順調に成長したが、だんだん言葉や表情の変化が減って歩行が不安定になり、寝たきりになった。

 母国で様々な検査を受けても原因がわからないなか、エリビーラさんはインターネットで調べ、てんかん治療に実績のある同病院が外国人を受け入れていることを知った。「娘を助けてほしい」とメールで懇願し、2014年2月、7歳のときに来日した。診察した小林さんが、難病研究で成果を上げていた横浜市立大に血液を送り、遺伝子解析してもらったところ、ビタミンの一種である葉酸の代謝に関わる遺伝子の異常が判明。脳の働きを維持する葉酸の不足を薬で補う治療が効果的であるとわかった。

 専門家によると、同じ遺伝子異常の患者は日本人で2人しか報告されていない。外国人が日本で診断されたのは初めてだった。

 帰国して約2か月後、小林さんから検査結果と治療薬を伝えられると、エリビーラさんは「原因がわかり、治療が受けられる日が来るなんて」と涙をこぼしたという。ロシアで投薬を始めると、てんかん発作は治まり、徐々に手足が動くようになった。今では自力で座り、食べ物をスプーンで口に運ぶこともできる。

 同病院の遠山潤・統括診療部長は「海を越え、『わが子を治したい』という熱い気持ちに応えることができた。まれな病気でも見逃さず、治療につなげられるよう努めたい」と話した。

2019年1月9日
ヨミドクター
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