昨年12月に米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属のFA18戦闘攻撃機とKC130給油機が高知県沖南方の太平洋に墜落した事故で、両機のフライトデータレコーダーから発信されたとみられる信号を米海軍が探知していたことが、在日米軍への取材で分かった。回収できれば事故原因究明に役立つ可能性があるが、水深約3000メートルの深海に沈んでいるとみられ、引き揚げは困難を伴う。亡くなった乗員の中には搭乗前、米国に住む母親に電話し、それが家族との最後の会話になった兵士もいたという。

海兵隊は「墜落した機体の場所を特定したとまで言える状況ではない。フライトデータレコーダーの位置と機体の場所が一致していることに希望を持ち続ける」としている。

事故は12月6日、高知県・室戸岬の南南東で夜間訓練中に発生。岩国基地から離陸したFA18とKC130が接触し、墜落した。FA18の乗員2人が救助されたが、うち1人が死亡。KC130の乗員5人が行方不明となったが見つからず、死亡したとして捜索は打ち切られた。

海軍は横須賀基地(神奈川県)から深海の引き揚げ作業の専門家を現場海域に派遣。12月19日に飛行データを記録したフライトデータレコーダーからとみられる三つの異なる信号を探知した。うち二つの信号はKC130の位置を示し、残る信号はFA18に関係するものと考えられるという。三つの信号は水深約3000メートルで確認された。

海兵隊は引き揚げについて「気象や海の状態、水深、海流など総合的にリスクを評価し、判断する」としている。米軍事専門誌によると、フライトデータレコーダーから信号が発信できるのは事故後、30日間。発信が途絶えている可能性もある。

信号の探知には、船上からセンサーが付いたケーブルを海中に垂らしてえい航する海底探査用の音響信号探知システム「TPL25」が使用された。水深約6000メートルまで探査可能だという。同ソナーは2014年に南シナ海上空で239人を乗せたまま消息を絶ったマレーシア航空機捜索の際にも投入されたという。
 
KC130の乗員は38歳〜21歳で、同基地の第152海兵空中給油輸送中隊所属だった。米メディアによると、KC130に搭乗し亡くなったケビン・ハーマン中佐(38)は妻と7〜12歳の3人の娘とともに日本に赴任し、今夏米国に戻る予定だった。事故が起きた日の夕刻、ケビン中佐は搭乗前に米国にいる母親に電話をし、医療検査を受けたばかりの母親の体調を気遣っていたという。事故後、父親は地元メディアに「わたしたちはすべての海を満たすほどの涙を流した」と語っていた。(時事通信社編集委員 時事総研 不動尚史)

時事ドットコムニュース 2019年01月09日01時26分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019010900056