琵琶湖の固有種で、今が旬の「セタシジミ」の漁が危機に陥っている。昨秋の台風21号などの影響で、シジミが生息する湖底が荒らされたことが要因とみられる。これまでも漁獲量は年々減少していたが、本年度はまったく読めない状況で、漁業関係者から悲痛な声が漏れている。県も、状況の把握や対策に向けて動きだしている。

 セタシジミは、琵琶湖水系にのみ生息する二枚貝で、大きさは二〜三センチ。全国の市場に出回るシジミの2%程度と希少な存在だ。ふっくらとした肉厚な身から、コクのあるだしが出ることから、高級料亭などでも扱う。水深一〇メートルほどの浅い湖底にすみ、一九五〇年代ごろは年間五千〜六千トンの漁獲量を誇った。だが近年は、砂地の減少や水草の大量繁茂などにより、湖底の泥化が進んで、漁獲量が激減。ほとんどが北湖での漁獲で、年間五十トン前後で推移している。

 五〜七月の禁漁期を経て八月から漁が始まるが、県水産試験場によると、昨年九月の台風21号以降、シジミがすむ湖底の砂地が波で流され、漁がほぼできない状況。引き網には小石や古い貝殻が多数交ざり、シジミ自体はほとんど見られないという。

 県内でシジミの漁獲量が多い堅田漁業協同組合(大津市)には、専門漁師が十二軒ほどあるが、多い人で例年の三分の一の漁獲量だ。通常なら漁は年末年始に最盛期を迎えるが、燃料価格の高騰などで採算が合わなくなってきており、船を出すこともままならない。今井政治副組合長(69)は「業者からの注文も入っているが、断っている」と打ち明ける。

 米原市にある琵琶湖の鮮魚卸専門店「魚万商店」でも、シジミの入荷量が、例年の三分の一から四分の一に減っている。同店では、セタシジミをスーパーや高級料亭などに卸しているが、新規の注文は断っている。シジミを冷凍加工する業者には、加工を先送りするなどの対応をしてもらっている。

 同店の世森伸吾代表(45)は「過去に台風は何度もあったが、ここまで減るのは例外。シジミが採れないと、漁師も漁に出なくなり、負の連鎖が続く。どうしたらいいのか」とため息を漏らす。県水産試験場の担当者も「漁場回復に向けて検討しているが、どれぐらいで回復するのか検討がつかない」と頭を抱えている。

 県は本年度中に、大学や国の研究機関などの専門家を集めた会議を立ち上げ、状況把握と今後の対策に向けて検討する方針だ。

 (浅井弘美)

漁獲量が落ち込むセタシジミ=県水産課提供
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中日新聞 2019年1月10日
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20190110/CK2019011002000025.html