スルメイカ記録的不漁 珍味、駄菓子に値上げの波
2019/01/10 15:00

 日本近海のスルメイカが記録的な不漁続きで、価格が例年の2倍以上で高止まりしている。世界的な不漁で外国産イカも高騰。業者は苦境に陥り、塩辛など珍味や駄菓子に値上げの波が押し寄せる。研究者は資源回復は当面難しいと指摘。高値はまだ続きそうだ。
 「イカが全くいねえ。こんなに早く漁を終えるのは初めて。燃料費も高く、船を出せば赤字がかさむだけだ」。50年以上イカ漁を続けてきた男性(69)=北海道函館市=は嘆く。

 「イカの街」で知られる函館では、スルメイカ漁が例年6月から翌年1月まで続く。だが市漁協によると、今期は所属の小型イカ釣り船約20隻の9割ほどが昨年10月中旬から休漁状態だ。

 農林水産省によると、2017年のスルメイカ漁獲量は前年比13%減の6万1千トンで、10年前の3割以下。記録のある1956年以降では2年連続過去最低を更新した。18年も10月末までで前年をさらに下回るペースだ。全国の産地市場のスルメイカの平均価格はかつて1キロ200円前後だったが、16年からは500円から600円台で推移している。

 「全国いか加工業協同組合」(東京)によると、海外産イカの仕入れ値も例年の2倍以上に高騰したとの報告が組合員から寄せられる。世界的な不漁に加え、韓国や中国などの需要拡大も一因とみられる。日本海の排他的経済水域(EEZ)内での北朝鮮船などによる違法操業といった不安要素もある。

 駄菓子で知られる「よっちゃん食品工業」(山梨県中央市)は昨年6月から「カットよっちゃん」の規格を変えて実質的に値上げし、「当り付き」の販売も終了した。

 イカの珍味が看板商品の伍魚福(神戸市長田区)は昨年、商品の値上げや価格を据え置いて容量を減らす実質値上げに踏み切った。16年秋以降、国産スルメイカの仕入れ値が2〜3倍になっており、同社の担当者は「今年も漁が芳しくないと聞いている。イカはうちの一番の人気商品でやめるわけにはいかない。何とか乗り切りたい」とこぼす。

 北海道大の桜井泰憲名誉教授は日本近海の不漁について「冬に産卵場となる東シナ海の水温が低く、ふ化がうまくいっていない。親イカの資源量が年々減っているため不漁が続きそうだ」と指摘している。

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