生まれる前の胎児に染色体の異常がないか妊婦の血液で判定する新型出生前検査について、日本産科婦人科学会は検査を実施する施設を増やすため施設の要件を緩和する方向で、学会の常務理事会で検討することになりました。

新型出生前検査は、妊婦の血液を分析して生まれる前の胎児にダウン症など3つのタイプの染色体異常があるか判定する検査です。

検査は、産婦人科と小児科の両方の専門医がそれぞれ常勤することなどを要件として認定された国内の92の施設で行われていますが、
法律上の罰則がないため、認定を受けずに検査を実施する医療機関があり、日本産科婦人科学会は、こうした施設の中には検査結果が十分に説明されないなどの問題があると指摘していました。

こうした中、学会は、妊婦のニーズに応えるために認定施設を増やす必要があるとして、これまでの認定施設のほかに、産婦人科の医師しか常勤していない医療機関でも、
学会が行う研修を修了するなど、一定の条件のもと、検査を実施できるようにする案を学会の常務理事会で検討することになりました。

専門家からは、小児科医などがかかわらずに検査を行うと、妊婦に対して幅広い情報提供ができなくなるという意見や、これまでの議論が公開されていないことが問題だとする意見などがでています。

学会ではこうした意見も踏まえて、今月中にも常務理事会を開きたいとしています。

・新型出生前検査とは

生まれる前のおなかの中の胎児に異常や病気がないか調べる出生前の検査には、羊水や「じゅう毛」と呼ばれる組織を採取してほぼ確実に診断できる「羊水検査」や「じゅう毛検査」のほか、血液中の成分で調べる「母体血清マーカー検査」や超音波を使った「エコー検査」などさまざまな検査があります。

このうち、新型出生前検査は、妊婦の血液を分析しておなかの中の胎児にダウン症のほか、18トリソミー、13トリソミーと呼ばれる合わせて3つのタイプの染色体の異常があるかを検査します。

国内では平成25年から始まり、去年7月の段階で日本医学会が認定する92の施設で実施していて、去年9月までに認定施設での検査の件数は6万件以上に上っています。

新型出生前検査では、採血による検査のため、身体的な影響が小さいという特徴がある一方、「陽性」と判定された場合でも診断を確定させるためには羊水検査などが必要となります。

また、検査の結果によっては妊娠の継続や中断を選択することとなり、妊婦やその家族が正確で十分な情報を得て、みずから意志決定ができるよう、適切なカウンセリングを検査前後に受けることが大切だとされています。

その一方で、法律上の罰則がないため、認定を受けないまま検査を実施する施設も少なくとも15以上あるとされ、学会では、こうした施設の中には、十分なカウンセリングが行われないケースがあるなどの問題を指摘しています。

認定外の施設で検査を受けた妊婦が不安になり、改めて認定施設に相談に訪れたケースは、これまでに全国で40件ほど報告されているという研究結果もあり、内容について相談しても「インターネットで調べてください」と言われたり、検査結果を誤って伝えられたりするケースもあったということです。


出生前検査の実施施設 要件緩和で増加検討へ
2019年1月10日 6時30分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190110/k10011772931000.html