ヤマト運輸とは30年近い取引があるという北海道の小売店店主が憤る。

「年明けの3日のことでした。関東まで4件の荷物を冷蔵で運んでほしいとヤマトに依頼したところ、翌日、お客さんから『冷凍だった』とクレームが入ったんです。ヤマトに伝えたら、担当ドライバーから『途中の幹線輸送で冷凍になった』と謝罪された。年末に“おせちの問題”があったばかりなのに……」

 昨年末、トラックの温度設定を間違え、福岡県から北海道へのおせち料理、1200個以上を配達できなかったヤマト。冷凍して送ったはずの商品が、冷蔵で送られていたことが原因だった。被害総額は1800万円に上っている。

 ヤマトがクール宅急便の不祥事を起こすのはこれが初めてではない。13年にはクール便を社内規約通りに取り扱っていない拠点が全体の3分の1もあったとして、謝罪に追い込まれている。

 だが、翌14年、私はヤマト最大の中継拠点「羽田クロノゲート」に1カ月間潜入取材した際、クール便の荷物が社内ルール違反にあたる10℃以上の温度で仕分けられている現場を何度も目撃した。

「お歳暮の時期などは冷蔵・冷凍庫に入りきらない」
 ヤマトは昨年、働き方改革の一環として取扱荷物の総量を絞っていたはずだった。その最中に今回の不祥事は起きたことになる。

 改めて思うのは、そもそも宅配業者がクール便を扱うのは無理ではないか、ということだ。ヤマトの場合、集荷から配達まで積み替えは5回に及ぶ。その間、厳密な温度管理をするのは不可能に近い。

 現場ドライバーも「お歳暮の時期などは冷蔵・冷凍庫に入りきらないので、常温室に積んで運んでいる。クール便を配達する時でもコールドバッグは使わない。開けて入れて出して畳んで、という作業で1個当たり1分以上ロスしてしまうから」と証言する。

 昨年10月、ヤマトHDの決算会見で、私は「社内規約を守れないクール便を廃止すべきでは」と質問したが、芝粼健一専務の回答はこうだった。

「クールの品質や、クールを止める・止めないに関しては、今ここでお答えすべきことではありません」

 ヤマトの問題意識の低さが如実に現われていた。今後もクール宅急便での事故は繰り返されることだろう。

(横田 増生/週刊文春 2019年1月17日号)

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