2020年東京五輪・パラリンピック招致を巡る不正疑惑で、フランス司法当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)に対し贈賄容疑で本格捜査を始めたことを受け、国際オリンピック委員会(IOC)は11日、調査に着手した。事態の混迷を受け、JOCは12日、竹田会長が15日に東京都内で記者会見を開くと発表した。

 IOCは11日、倫理委員会を開き、竹田会長からテレビ会議で事情を聴いた。IOCは詳細な内容を明かさず、処分の有無を示さなかった。ただIOCの事情に詳しい海外の関係者は「IOCは最近、疑惑のある委員に厳しい態度で臨んでいる。IOCにとっても難しい判断を迫られるだろう」との見解を示した。

 仏紙ルモンドの報道で捜査が発覚した当日のIOCの迅速な対応は危機感を如実に表している。14年に発覚したロシアを巡るドーピング問題はまだ決着を迎えておらず、国際ボクシング協会のラヒモフ会長は米財務省から麻薬売買への関与を指摘された。巨額の開催経費を嫌って招致都市が減る中、IOCは不正から五輪ブランドを守ることに過敏になっている。

 竹田氏はIOCでマーケティング委員長の要職を務め、スポンサー収入の増大に貢献してきた。東京五輪の開催が来年に迫っていることもあり、JOC関係者から「バッハ会長は竹田氏を守るだろう」との声も聞かれるが、16年リオデジャネイロ五輪招致を巡る買収疑惑で、ブラジル・オリンピック委員会会長だったカルロス・ヌズマン氏はIOC名誉委員の資格停止処分を受けている。

 竹田氏へのフランス司法当局の捜査は昨年12月に始まり、竹田氏は聴取に「不正なことは何もしていない」と否定している。ただ今後、捜査の長期化も予想され、竹田氏は記者会見を開いて、経緯を説明する。JOCは16年9月、違法性はないとの調査チームの報告書を公表しているが、JOCトップを巡る混乱が長引けば、東京五輪への影響は必至だ。

 招致委幹部だった男性は「違法性はなかったとするJOCがまとめた調査結果が全て。竹田氏への捜査は驚きでしかない」と困惑し、東京都の幹部は「イメージが悪すぎる。今後どうなるか分からないが、五輪まで1年半、準備を粛々とやっていくしかない」と話した。【田原和宏、竹内良和】

毎日新聞2019年1月12日 19時26分(最終更新 1月12日 19時26分)
https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20190112/k00/00m/050/177000c