https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190117-00259897-toyo-bus_all&;p=1

労務管理の現場において、たばこ休憩をする社員としない社員の不公平感が話題になることは少なくありません。また、下記のように、頻繁にたばこ休憩をする社員が懲戒処分を受けたという事例もあります。

大阪府は喫煙のため勤務時間中に職場を繰り返し抜け出したとして、健康医療部の男性職員(49)を職務専念義務違反で訓告処分としたと明らかにした。2016(平成28)年4月からの2年間で、計約440回、100時間以上に上った。(2018年6月5日付 産経新聞)

職務専念義務は、国家公務員法第101条および地方公務員法第35条に定められた公務員の義務で、公務員は勤務時間には注意力のすべてを職務の遂行のために用いなければならないとされています。

■たばこ休憩=仕事していない? 

民間企業においては、労働基準法などに職務専念義務は定められていませんが、職務専念義務は雇用契約に付随する社員の義務であると法的には考えられています。

公務員や民間企業社員に職務専念義務があることは大前提として間違いありません。しかし、昼休みなど会社が定めた休み時間以外に「たばこ休憩」をとることは、本当に職務専念義務違反なのでしょうか。そして、そもそも勤務時間中にたばこを吸うことは例外なく「休憩」なのでしょうか? 

本稿は、喫煙や、たばこ休憩を推奨する意図ではありませんが、「たばこ休憩=仕事をしていない」という社会通念に対し、法的観点や昨今の働き方改革を踏まえ中立的な立場で考察を加えてみたいと思います。

まず、「職務専念義務」に対する解釈ですが、これを厳密に解釈すると、「業務時間中の私的行為は一切許されない」ということになります。
しかし、少なからずの職場で、デスクにコーヒーやジュースを置いてそれを飲みながら仕事をしたり、小腹がすいたときにお菓子を口にしたりすることは許されているのではないかと思います。むしろ福利厚生としてお菓子や飲み物を提供している職場もあります。

パイロットや鉄道運転士など、一瞬の不注意が乗客の命に関わる職務は別に考えなければなりませんが、一般的なオフィスワークの職場においては、コーヒーやお菓子が黙認されるなど、「職務専念義務」は実務上、多少の「ゆとり」を持って運用されているというのが実情です。

このように「ゆとり」という考え方を前提としてあるがゆえ、コーヒーを飲む社員が職務専念義務違反として懲戒処分を受けたという話は聞いたことがありません。しかし、なぜ、たばこを吸う社員だけが目の敵にされ、問題視されるのでしょうか。

■デスクにいる=仕事している?

この点、たばこ休憩が目の敵にされる理由は、「自席を離れて喫煙スペースに行く」からではないかと考えられます。コーヒーは自分のデスクで飲むから許され、たばこは喫煙スペースに行くから許せない、というのが多くの人の判断基準になっているのではないかと思います。

ここで冷静に考えていただきたいのは、「自分のデスクにいれば、イコール仕事をしているのか」ということです。自席に座っていてもコーヒーを飲みながら頭の中はボケーっとしているかもしれません。逆に、自席を離れて喫煙スペースに行っていても、たばこを吸いながら企画のアイデアを整理しているならば仕事をしているといえます。

一見、たばこ休憩が多く見えても、与えられた仕事をしっかりこなし、成果を出しているならば、雇用契約上の義務は果たしていると考えられ、職務専念義務違反にはならないのではないでしょうか。

もし、成果以前の問題として、社員に業務時間中は整然とデスクに向かうことを求めるのであれば、就業規則で「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」と定めれば、たばこ休憩であろうが、コーヒーをいれに行くことであろうが、就業規則違反で懲戒処分の対象とすることは可能です。

接客業や製造業など、お客様への対応や、工場全体の生産ラインを効率的に動かさなければならないという合理的な理由がある職種では、「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」という就業規則は意味があります。

しかし、たとえばスマートフォンのゲームを開発する会社において、全員が整然とデスクに向かうことと、良いゲームが開発されることには、合理的な関連性があると考えることは難しいでしょう。コーヒーを飲むのもたばこを吸うのも本人の判断に任せ、休憩の回数で人事評価を決めるのではなく、アウトプットの量や質で評価したほうが、伸び伸びと働くことができ、良い製品が生まれてくるのではないでしょうか。

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