中国で発生しているアフリカ豚コレラ(ASF)が、ほぼ全土に広がってきた。17日時点で24省・区・直轄市の118カ所で発生を確認。中国農業農村部の15日の発表によると、これまでに91万6000頭の豚を殺処分した。感染はモンゴルにも拡大するなど、日本でも警戒が必要な状況が続いている。

 中国でのASFは、昨年8月にアジアで初めての発生となった。岐阜県で9月に発生した豚コレラとは別のウイルスが豚やイノシシに感染する病気で、人間には感染しない。ただ、家畜には高い致死率をもたらすため、畜産農家にとっては大きな脅威だ。

 直近の中国の発生事例では12日に江蘇省で、同じ企業が管轄する2農場約7万頭のうち、約1400頭が死亡した。豚コレラと違い、ASFにはワクチンがなく、発生したら殺処分するしか対処法がない。

 中国政府によると、発生した24省・区・直轄市のうち、21省・区・直轄市では規制が解除され、「発生は散見される状況」としている。しかし、ASFのウイルスは感染能力を長期間維持でき、感染した豚の排せつ物中では、約1年半生存できるという報告もあり、今後も注意が必要な状況だ。

 さらに、感染した豚肉でもウイルスは感染能力を保つ。日本の研究者によると「冷凍・冷蔵技術の進歩でウイルスもさらに長く残るようになっている」という。

 日本の空港では、中国から持ち込まれた豚加工品からASFウイルスの遺伝子が昨年3例見つかった。農水省は旅行客に中国などから肉や肉製品を持ち込まないことを呼び掛けている。農家には徹底した防疫対策と、豚の異常を確認した際には都道府県の家畜衛生担当部局などへの迅速な報告を求めている。

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