18年版犯罪白書によると、17年に新たに刑務所に入所した女性受刑者の36.7%が覚せい剤取締法違反で、男性の26.7%を大きく上回る。再犯リスクも高く、女性は57.2%が2回目以上の入所者だった。特に女性の依存症者は「虐待や搾取を受けている場合もあるなど背景が複雑で、回復が難しい」(法務省担当者)とされる。
刑務所では現在、対象者を指定して「薬物依存離脱指導」をしている。再使用に至らないための知識やスキルを習得させた上で、出所後の治療や援助の必要性を認識させることを目標としたカリキュラムを組んでいる。期間や頻度は1〜6カ月で2〜12回程度(1回60〜90分)だ。
刑務所出所後に再入所した人の割合は、06年の指導導入前に比べてやや改善しているが、法務省は、依存症からの回復で課題となる感情表現の改善、人との信頼関係の構築、自己を大切にする気持ちの醸成などに焦点を当てた支援が必要と判断した。
プログラムは札幌刑務支所の20〜30人を対象に実施する。依存症からの回復には同じ境遇にある人の話に共感したり、正直な気持ちを安心して話したりする場も必要とされることから、法務省は支所内にプログラムを受ける専用のエリアを設ける方針。プログラムの開発は民間団体に委託し、出所した後も継続してサポートを受けられる仕組み作りを目指す。民間団体は今後公募する。
依存症からの回復を支援する民間団体には農業を活用している事例もあり、支所でもプログラムとは別に農作業も取り入れる。作物を育て、収穫する達成感を得ることを通じて生活習慣改善につながるとされる。
法務省は5年間の必要経費約4800万円を来年度当初予算案に盛り込んだ。担当者は「薬物依存症の受刑者の立ち直りには回復という視点も重要。広く社会の理解を得られるような取り組みにしたい」と話している。
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