*ソース元にニュース画像あり*
http://www3.nhk.or.jp/lnews/sapporo/20190215/7000007896.html
※NHKローカルニュースは元記事が消えるのが早いので御注意を
いよいよスタートしたTPPや日本とEUのEPA。TPP参加国から先月輸入された牛肉は、
前の年の同じ時期に比べ1.6倍に増えています。
外国産牛肉の価格が安くなり買い求めやすくなる中、全国一の肉牛の産地・北海道の生産者は、
消費者の心をつかもうと新たな取り組みに乗り出しています。
十勝の清水町で肉牛を飼育している生産者、安藤智孝さんは、今、新しい牛肉の作り方に挑戦しています。
どのような肉が消費者から求められているのか、さまざまな店に足を運んでニーズを聞き取っているのです。
先月下旬には札幌市中央区のハンバーグ専門店を訪れ、経営者から高齢者の客が多いため
脂が少なくて食べ飽きしない牛肉が求められているといった傾向を教わりました。
店や地域ごとに消費者のニーズはさまざまですが、安藤さんは、エサの種類や与えるタイミングなどを調整し、
消費者や取引先の好みにあった牛肉を作りだします。
こうした方法を安藤さんは「オーダーメード肥育」と名付けています。
例えば、生に近い状態の牛肉のメニューを出している業者からは、
「赤身の味わいを強くしてほしい」という要望を受けました。
これに対して安藤さんは、牛を出荷する直前まで、胃の働きが良くなり赤身の風味が強まるという
「トウモロコシの発酵飼料」を与えます。
このように細かなニーズにひとつひとつ応えていくことで、価格が安くなった海外産の牛肉に対抗したいと考えています。
安藤さんは、
「どういうふうに育てればお客様が求める牛肉になるのかを追及することが、TPPに対抗するひとつではないか。
お客様に選ばれる牧場であることが生き残る戦略だと思っています」と話していました。
一方、全国一の肉牛の生産地・士幌町では生産者が一丸となった牛肉づくりが始まっています。
士幌町では手ごろな価格の国産牛で知られる「ホルスタイン」の生産が盛んですが、
さらに品質を上げようと今、生産者たちが肥育のノウハウを互いに教え合うという新たな取り組みを行っています。
通常、ライバルどうしの生産者が、試行錯誤して磨いた技術を教え合うことはありませんが、
これから安い海外産牛肉との競合が予想されるため、あえて情報交換をし、
町全体で肉の質を高めようというのです。
生産者団体のメンバー、鎌田佳尚さんは、
「自分より良い牛肉を作る人がたくさんいますので、それが次の目標になり、それを繰り返していけば、
自由貿易に立ち向かっていく武器になる」と話していました。
鎌田さんたちの取り組みは少しずつ成果が出ています。
今月、士幌町のスーパーでは、鎌田さんたちが出荷した牛の“一頭売り”が行われ、大勢の客でにぎわいました。
手ごろな価格がうりだったホルスタインの肉ですが、生産者どうしがノウハウを教え合いながら
味にも磨きをかけた肉は次から次に売れ、店内には長い列ができていました。
以前は行列ができるようなことは多くなかったということで、鎌田さんも自分たちの取り組みに手応えを感じています。
1時間かけて帯広市から訪れたという男性は、
「味が普通のスーパーとは全然違う味なので、おいしく食べています」と話していました。
鎌田さんは、
「お客さんに『おいしい』とか『また食べたいね』とか言ってもらえるのは本当にうれしいです。
食卓を支えることが、私たち生産者がやるべきことなのでこれからも頑張っていきたい」と話していました。
TPPやEUとのEPAの発効で安くなった外国産の食品の輸入は今後も増えるとみられますが、
これまでの作り方、売り方を見直し貿易自由化の波を乗り越えようという生産者の動きも増えそうです。
02/15 19:39