幻想的な姿で知られる巨大な深海魚「リュウグウノツカイ」について沖縄県にある研究機関が人工授精と人工ふ化に成功したと明らかにしました。専門家によりますと、世界で初めてのケースだということで、謎に包まれた生態の解明につながると期待されています。

沖縄美ら島財団総合研究センターによりますと、先月28日、沖縄県読谷村の沖合で全長およそ3メートルのリュウグウノツカイ2匹が定置網にかかっているのが見つかりました。

2匹はオスとメスで水族館に運ぶ間に死にましたが、研究のため、それぞれの体内から取り出した精子と卵子で人工授精を行ったところ受精に成功し、およそ20匹の赤ちゃんが生まれたということです。

魚の分類に詳しい神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏学芸員によりますと、リュウグウノツカイの人工授精と人工ふ化に成功したのは世界で初めてのケースだということです。

リュウグウノツカイの赤ちゃんは全長およそ7ミリに成長し、成魚に似た長く伸びる背びれが確認されました。

初めての飼育で、使う水や水槽の形などに気を使いながら赤ちゃんの成長を見守っていましたが、餌を食べずに衰弱する様子が見られるようになり、19日までにすべて死んだということです。

今後、飼育で得られた情報や標本をもとに、謎に包まれた生態の解明を進めることにしています。

沖縄美ら島財団総合研究センターの岡慎一郎主任研究員は「だめもとで始めたが、ふ化まで運よくこぎ着けることができた。小さな一歩だと思うが、深海の未知の生き物の生態を明らかにするきっかけになればと思う」と話しています。

■リュウグウノツカイとは

「リュウグウノツカイ」は長く伸びる赤い背びれや腹びれ、それに細長い銀色の体といった特徴がある深海魚です。その幻想的な姿から「竜宮城からの使者」という意味の名前がつけられています。

専門家によりますと、最大で全長5メートルのものが確認され、深さ200メートル以上の深海に生息するとされています。

日本の沿岸で捕獲されたり、浜に打ち上げられたりすることもあり、ことしに入ってからは、富山県や兵庫県の沖合で定置網にかかっているのが見つかっています。

ただ正確な生息水域や、長い背びれがどのような役割を持つのかなど詳しい生態は分かっていません。

2019年2月19日 21時30分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190219/k10011820651000.html?utm_int=news_contents_news-main_001
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