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商用バンの代表格といえるトヨタ自動車の「ハイエース」が、海外市場向けの新シリーズをフィリピンで初公開し、大きな話題を呼んでいる。日本でも誕生から50年以上、商用だけでなく乗用車として乗り継ぐファンも多いハイエース。なぜ、ここまで愛され続けているのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

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ファミリーカーと言えばミニバンという文法が確立されて久しい日本において、特異な人気を誇っているモデルがある。トヨタ「ハイエース」だ。

今日のミニバンがFWD(前輪駆動)全盛となっているのに対し、エンジンの上に前席を置くキャブオーバーと呼ばれるパッケージを守り続けている。2018年の販売台数は約6万台。1か月平均5000台という数字は、日本市場では立派なメジャーモデルと言える水準だ。

だが、ハイエースの名を新車販売ランキングの上位で見かけることはない。新車販売データを発表している日本自動車販売協会連合会(自販連)は毎月、上位50位までの普通乗用車販売ランキングを発表しているが、ハイエースはその下位のほうで見かける程度だ。

その理由は商用車の比率が高いから。2018年の販売台数のうち、乗用車およびマイクロバスが1万2000台で、4万8000台は商用バンモデルなのだ。

ところが、ハイエースに限ってはこの比率がそのまま実態を反映しているとは言えないと、ハイエースのカスタマイズを得意としている改装ファクトリー関係者は言う。

「商用モデルのうち一定割合が、乗用車やキャンピングカーとして改装されています。また、中古車になった段階でカスタマイズされるケースもあります」

なかには4ナンバーのまま、ビジネスとマイカーの両方に使っているケースもあり、乗用用途の実数はデータよりかなり多いとみられる。

現行ハイエースが登場したのは2004年で、今年で丸15年になる。車両価格も上位グレードになると決して安くない。そのハイエースが乗用向けとしてもこれだけ長年にわたって商品寿命を保っているのは、驚異的と言えよう。

新車販売ばかりではない。中古車市場でもハイエースは大人気だ。前出のファクトリー関係者によれば、古いモデルや走行距離の多いモデルでも高値がつき、しかも安定してすぐさばけるのだという。

「なぜハイエースが? と言われると、実は理由は明確ではないんです。信頼性や耐久性、室内の広さは最大の競合モデルである日産『キャラバン』や、消えていった多くのライバルも十分に持ち合わせていたからです。

といって、わけもなくハイエースが他を圧倒したのかというと、そうでもない。ビジネスを手がけている自分自身、ハイエースには妙に惹かれる要素がある。いかにも強固で、かつ質実剛健を絵に描いたようなデザインのためかもしれません。

もちろん使いやすさ、改装のしやすさなど、フリーダムを感じさせる点も魅力。キャブオーバー車のハイエースはニッチ商品ですが、そのニッチには案外たくさんのファンがいる。そういう世界でオンリーワンになったクルマは実に強く、本当に値崩れしませんね」