株主に自社製品や金券などを贈る株主優待制度が広がっている。導入数は今年1月末で1500銘柄を超え、過去最多となった。上場銘柄全体の4割近くに達する。とくに最近は株式を長く保有するほど優遇する仕組みが増えている。個人に安定的に株を持ってもらいたい企業は多く、優待の充実はさらに進みそうだ。

野村インベスター・リレーションズが優待制度を持つ銘柄(REIT=不動産投資信託などを含む)を1992年以降で調べた。1月末の導入数は1508銘柄と過去最多で、上場銘柄数に占める割合は37%に高まった。

実施内容をみると、保有期間に応じてもらえる優待品が増えたり、金額が上がったりする長期保有優遇タイプの優待が440銘柄に達した。毎年60〜70銘柄がこの仕組みを導入しており、「株式の持ち合い解消が進むなか、受け皿として個人投資家を取り込む動きが活発だ」(野村IR)という。

長期保有への優待を導入するブックオフグループホールディングスは、100株以上を連続して3年以上持つ株主にグループ店で利用できる買い物券を他の株主より500円多い2500円分贈る。非鉄専門商社のアルコニックスも100株以上を3年以上持つ株主が他の株主よりカタログギフトから多く優待品を選べるようにした。

個人投資家の興味を引こうとユニークな優待を用意する例もある。装着型ロボットを手掛けるサイバーダインは、1000株以上を持つ株主を対象に、装着者の意思に従った動作を実現する装着型ロボット「HAL」を使ったトレーニングプログラムを割引価格で提供する。ベネフィットジャパンは100株以上を持つ株主に、シャープの小型ロボット「ロボホン」の購入時に利用できる割引券などを贈る。

19年3月末が割当基準日の場合、優待を得るための最終売買日は3月26日になる。最終売買日の翌営業日の「権利落ち日」には株価が下落することも多く、注意が必要だ。

一方、機関投資家や証券会社では株主優待を使い切れず、受け取りを拒否したり、廃棄したりする場合もある。このため証券会社の業界団体である日本証券業協会は年内に、証券会社が自己売買などで保有する株式の対価としてもらった優待を、NPO団体などに寄付する新たな仕組みをつくる。

2019/3/12 6:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42326920R10C19A3MM0000/
https://www.nikkei.com/content/pic/20190312/96958A9F889DE6E0E1E0E4EBE0E2E3E3E2E1E0E2E3EB9F9FE2E2E2E2-DSXMZO4230734011032019MM0002-PN1-5.jpg