https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190312/k10011844891000.html?utm_int=news-life_contents_list-items_002
「自分は転勤があるのか」「転勤があると内々に聞いたがどこに配属されるのか」ーーー。
フタをあけてみると…思ってもみない遠方への赴任。家族や恋人と離れ離れ。会社の命令に逆らえば「出世の道はなくなる」と不満をぐっとこらえている人もいると思います。実は今、全国転勤を原則廃止する企業が出てきています。当たり前のように続いてきた転勤制度。無くなっていくのでしょうか?

■転勤は“人権侵害”?
「今、わが家はバラバラだ。会社の命令だから仕方ないという旦那。友達と別れたくない、もう転校はイヤだから1人で行って!と長女。どうしたらいいかわからない私。」

「夫は転勤、家事・出産・育児しろで何が女性活躍だ」
「マジで転勤先でまた保育園探さなきゃいけないとか憂鬱すぎる」
「会社の都合で住む場所を勝手に決められるとか、もはや“人権侵害”」
ネット上にあふれる転勤への不満。異動の内示が集中する今の時期、目立っています。

■6割が“地元で働きたい”
「将来、家族を持って子どもができた場合に迷惑かけてしまうかなと思って転勤のない会社を選んでいます」
「家族や友だちと離れて暮らすのに抵抗があるので転勤しないで仕事をしたい」

■企業は「転勤なし」PR しかし採用割れ
も…
「学生から転勤に関する質問が非常に多く地元志向が強くなってきたように感じます。全国転勤は当社には欠かせないと思っていますが、採用というのは会社の将来を支えるものなので、そこが一番の悩みです」

■“転勤廃止”を決断した企業
こうした中、ついに“転勤廃止”に踏み切る企業が現れました。全国200の拠点で7000人余りの社員が働く大手損害保険会社「AIG損害保険」です。この4月からは全国転勤を原則として廃止すると発表しました。

■”転勤廃止”の仕組み
全国を11のエリアに分けて…
・「転勤なし」8割が希望
去年12月に会社が行った社員への調査では、8割が「転勤なし」、2割が「転勤あり」の働き方を選択しました。
「われわれは“メガ損保”3グループに勝っていかなきゃいけない。新卒の採用もだんだん厳しくなっていて、ほかの会社とは違う制度や仕組みを持っていないと、いい人を引きつけられない」

■“幸せな内示”

■キャリア追求の選択も
“転勤廃止”の会社でも「転勤あり」を選択した人もいます。
中沢郁美さんは、2008年に名古屋市にあるグループ会社の支店に中途入社。入社当時は退職まで名古屋で働くつもりでしたが、その後、上司のすすめで東京本社に転勤。仕事の幅や視野は大きく広がったといいます。

■今後の課題は…
この会社ではこれから2年半をかけて、社員全員の希望をかなえようとしています。しかし、希望勤務地が東京や大阪の大都市に偏り、ポストの埋まらない地方が出るなど、課題にも直面しています。
「居住地の希望をかなえるという面では確かに社員に優しい制度かもしれないが、実際にそこで一体何をやっていくのか、自分のキャリアをどう描いていくのかというのは、社員自身が責任を持ってやらなきゃいけない制度。社員の側もそこをきちんと理解しないとこの制度はうまく回っていかない気がします」

■転勤は何のためにあるのか
もともと転勤制度は、企業が事業所を次々に全国に広げていった高度経済成長期に広がったといわれています。働き手にとっても終身雇用の下で成長する会社にわが身を委ねていれば、順調に昇進、昇給が望めるといった背景がありました。
しかし国内経済は成熟し、雇用環境も変化。その前提は大きく変わりました。転勤は何のためにあるのか。企業と社員が今、問われています。