http://tech.nikkeibp.co.jp/it/members/ITPro/ITTOMORROW/20030716/1/

TRONチップ:
 TRONとはBTRON,ITRON,CTRONなどの多くのプロジェクトの総称なわけだが,TRONチップとは1990年こ
ろに開発されていた32ビットの独自マイクロプロセサのことを指す(製品名で言えばG/Micro100などになる)。
TRONチップも,豊富なアドレッシング・モードをサポートし,一見エレガントなアーキテクチャなのだが,性能
がかなり出しにくかったようで,アプリケーション・ソフトウエアの不足とも相まって市場で成功することはなかった。

 TRONは米国の外圧により普及できなかったというのが定説になっている。また,TRONプロジェクトの中でも
ITRONのようにある程度普及したものもある。しかし,TRONチップに関して言えば,外圧があろうとなかろうと
市場で普及することはなかっただろう。既存のプロセサとの互換性を欠くだけでなく,その後のコンパイラやVLSIテクノロジ
の進化との乖(かい)離が著しかったからである(例えば,オブジェクト・コードのサイズ縮小が設計目標の1つ
になっていたようだが,その後のPCのメモリー容量の拡大のペースを考えれば,あまり重要な項目とは言えなかっただろう)。

 上記以外にも,高級言語を直接ハードウエアで実行するタイプのアーキテクチャが過去にいくつも提案されて
きたが,少なくともビジネス・コンピューティングの世界で普及したものはない。理由は明らかである。このよう
な特殊なチップを使うよりも,汎用のマイクロプロセサと優秀なコンパイラを使用した方が,はるかに安価で高速
なソリューションが得られるからである。