イギリスは歴史に学んだ
イギリスが世界中を植民地にして回ることに成功したのは、歴史を重んじることを国是とした国であったからだ。
彼らは、植民地経営に乗り出すまでに、膨大な知識を記録、整理し、歴史としてまとめる作業を数百年かけて行い、智慧をひたすら蓄え続けてきた。
彼らに侵略されたアフリカや南アジア、北米大陸やオセアニアの土着の人々が、自分たちの狭い経験をもとにイギリス人に対抗したのに対して、
イギリス人はローマ史からの歴史を学び、マキャベリなどの天才たちの知識を学び、それを自国に生じた事件に当てはめ、原住民を効果的に分断統治し、世界の半分を支配することに成功した。

たとえば当時イギリスの植民地であったインドは、香辛料などの原材料を輸出して イギリスを相手に多額の黒字を計上していた。
ところが黒字はルピーではなく、ポンドを使って決済され、そのままイギリスの銀行に預けられていた。

だからイギリスはいくら植民地を相手に赤字を出しても平気だった。
イギリスの銀行に預けられたポンドを、イギリス国内で使えばいいからだ。
インドは名目上は債権が増え、お金持ちになったが、そのお金をイギリスの銀行から自由に引き出し、自分の国では使えなかった。
お金の使い道は預金者ではなく、イギリスの銀行が決めていたからだ。
そしてもちろん、イギリスの銀行は国内の人々に貸し出した。
イギリス国民は植民地から輸入した品物で生活をたのしみ、
しかもしはらったポンドも イギリスの銀行に吸収され、イギリスのために使われるわけだ。
こうしてイギリスはどんどん発展した。
一方植民地はどうなったか。 たとえばインドは商品を輸出してもその見返りの代金はポンドでイギリスに蓄積されるだけだから、
国内にお金がまわらなくなる。どんどんデフレになり、不景気になった。
仕事がきつくなり、給料が下がり、ますます必死で働いて輸出する。
ところが黒字分の代金は、ポンドのまま名義上の所有としてやはりイギリス国内で使われる。
こうしていくら黒字を出してもインドは豊かになれなかった。
そして、赤字を出し続けたイギリスは、これを尻目に繁栄を謳歌できた。

このイギリスとインドの関係は、そっくり現在のアメリカと日本の関係だと言ってもよい。