平成に入り、単身世帯が夫婦と子で構成する世帯を上回りました。世帯割合でみると、2015年は34.5%。40年には4割近くになると推計されています。結婚したくてもできない人、あえてシングルを選ぶ人、それぞれの思いとは――。朝日新聞デジタルで昨年7月に配信され、このほど刊行された『平成家族』(朝日新聞出版)に収録されたエピソードを紹介します。(朝日新聞記者、田中聡子・山本恭介)※年齢や肩書などの内容は朝日新聞デジタル配信時のものです。

プロフィール答えたらお断り
 「あなたのような方を紹介することはできません」

 北海道で暮らす男性(47)は5年前、結婚相談所に電話をかけた。名前、居住地域、最終学歴、職業、年収、と矢継ぎ早の質問に淡々と答えていると、突然、そう言われ、電話を一方的に切られた。

 北海道の私立大学に進学し、運送会社に就職。だが、入社後5年ほどで、経営悪化に伴う希望退職制度に応じた。

 「まだ30歳。新しい職は見つかる」と考えていたが、地元銀行の破綻などの影響で景気は低迷。転職先は見つからず、清掃や警備員のアルバイトでしのぐ暮らしが続いた。

 これまで恋人がいたことはない。友人に聞かれれば「昔はいた」と答えた。30代後半になると、親類から「まだ相手がみつからないの?」。肩身が狭くなっていった。

女性へのアプローチに気後れ
 5年ほど前、アルバイトから契約社員になったのを機に、結婚相談所に電話をかけた。収入はほぼ変わらないが、安定する気がしたからだ。

 だが、冷たくあしらわれ、登録すらできなかった。

 今も飲み会に参加しているが、女性の連絡先は聞きづらい。「大学はいいところを出ていないとね」「公務員と結婚したい」と言った女性がいた。「自分は女性が求めるものを持っていないのかも」と感じ、気後れする。

 昨秋、職場で配置換えがあり、手取り収入が月15万円から10万円に減った。家賃は2万8千円。値引きのシールが貼られるのを待って総菜を買い、冬は室内でも厚着して、「もう我慢できない」と感じるまでストーブをつけない。

 それでも年金とパートで暮らす70代の両親からの仕送り2万円がないと、生活が立ち行かない。

離婚後に家購入した40歳男性
 「結婚も子どももリスク。それに比べ、城は裏切らない」

 埼玉県に住む会社員の男性(40)は2016年、一戸建てを購入した。男性は3LDKのその家を「城」と呼ぶ。

 2階には自ら設計に携わったバーカウンター。棚に並んだお気に入りのウイスキーを眺めながら飲む酒は格別だ。

 31歳で会社の同僚と結婚したが、妻との間で家事の分担をめぐって言い争いになり、互いにイライラするばかり。仕事帰り、外から部屋のあかりがついているのを見るとため息が出た。

 知人に結婚生活の話を聞くと、互いに我慢しながら暮らしているように思えた。自分は我慢できなかった。結婚生活は3年で終わった。

 再婚は考えていない。結婚までのプロセス、うまくいかなかったとき、離婚にかかる労力がわずらわしい。

 子どももいらない。子が問題を起こして親が責任を問われるニュースを見る度、「親になるリスク」を感じる。

 離婚後、自分の目標を考えた。思い出したのが就職直後に抱いた「家を持ちたい」という夢。35年ローンを組んで家を購入。家族はいないが、今は自分の好みに染めた家で過ごす時間が生きがいだ。

 老後の心配はしてない。「城」を壊して土地を売り、老人ホームに入ろうと考えている。

ここまで記事の半分
全文はソースで
https://withnews.jp/article/f0190425001qq000000000000000W08110101qq000019077A