吉野杉の耐震力「見える化」 シミュレーションソフトを普及へ 奈良の法人
毎日新聞 2019年8月19日 10時47分(最終更新 8月19日 10時48分)
木造住宅の耐震性能をアニメーションで示して地震の被害軽減につなげようと1月に一般社団法人「耐震性能見える化協会」が設立され、本部を奈良県川上村に、事務所を東京に置いて活動している。地元産の吉野杉の高い強度を実証する狙いもあり、木材のブランド力向上を目指す。
協会の代表理事を務める京都大生存圏研究所の中川貴文准教授(43)は同村の出身。木造住宅の損傷や倒壊の状況をアニメーションで確認できるシミュレーションソフト「ウォールスタット」を開発し、無償で公開している。
パソコン上で三次元の住宅を再現し、柱や壁の種類などを入力して地震動を与えると、実際の住宅の振動台実験のように、家が損壊・倒壊していく様子が目で確認できる。阪神大震災など過去に起きた地震や、今後予想される南海トラフ巨大地震など、あらゆる地震に対する検証が可能という。
さらに、このソフトでは、住宅に使われる木材ごとに耐震性能を比較することができるため、川上産吉野材の強さを検証することができるという。川上村の吉野杉は、密植して成長を遅らせ年輪の間隔を狭くすることで強度の高い木材となっていると言われる。中川准教授は「その強さを『見える化』して証明し、家造りに生かされる村の木材の良さを伝えたい」と話す。
先月25日には同村迫で設立記念の会合があり、協会▽村▽同村と林業団体などで構成する一般社団法人「吉野かわかみ社中」▽京都大生存圏研究所――の4者で連携協定を結んだ。かわかみ社中は「吉野杉はこれまで美しさでアピールしてきたが、強度も目に見える形で証明できたら、住宅の構造材を選ぶ際の判断材料として売り出していける」と期待する。【萱原健一】
「ウォールスタット」で再現した、木造の建物が地震で損傷するシミュレーション
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