森田健作知事が二十日、台風15号の被害が大きい鋸南(きょなん)町を視察した。知事の被災現場視察は十四日の南房総市に続いて二度目。九日の台風上陸から十一日たっており、町民から「もっと早く来て現状を知ってほしかった」との声も聞かれた。 (中谷秀樹)

森田知事は、二千三百棟に上る住宅被害が確認されている町内で被害が大きかった港町の岩井袋地区を視察。突風で屋根が吹き飛ばされ、雨漏り対策でブルーシートに覆われた民家が軒を連ねる光景を見て驚きを隠さなかった。「情報でこうだろうと思っていたが、実際に見るとこれはひどいなと思った」と語った。途中で会った町民には「県としてしっかり頑張ります」と声を掛けた。

 また、中小企業の被災現場視察として、地元漁業者に鮮魚を冷やす氷を卸している「大福商店」にも足を運び、停電で五日間稼働できなかった製氷工場を見て回った。鈴木仁社長(56)は「被害で商売を辞める話がいくつか耳に入っている。本当に千葉県の産業を守ってください」と要望し、知事は「県としても相談窓口をつくり、商工会議所と連携しながら対応したい」と応えた。

 森田知事は「町民の皆さんから『どうなっているんだ』と言われるかと思ったら協力的だった。だからこそ、一日も早く回復していかないといけない」と決意を新たにした。案内した白石治和町長は「百聞は一見にしかずだから」と、知事の視察を歓迎した。

 一方で、冷ややかな声もあった。視察の様子を見た渡辺君子さん(77)は「瓦がたくさん飛び散って片付けが大変だった。肝心な時に来てくれないで、落ち着いてからではどれだけ大変だったか分からないと思う」と話した。

2019年9月21日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201909/CK2019092102000157.html
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