消費増税が実施されてから10日が過ぎ、9月に駆け込み消費が目立った商品を中心に反動減が鮮明になってきた。軽減税率の対象外の日用品や高級ブランドや家電などの高額品の落ち込みが大きい。2014年4月の増税時は消費の緩やかな低迷が長く続いたが、今回は軽減税率などの対策への距離感で見方に濃淡が出てきている。

食品スーパーでは軽減税率の対象外で税率が8%から10%にあがった日用品などの商品で、駆け込み消費の反動減が顕著になっている。

全国のスーパー約460店の販売データを集計する日経POS(販売時点情報管理)を分析すると、例えば歯みがき類の販売個数は増税後、10日連続で前年を下回った。減少幅は最大で4割に達した。9月終盤には前年比2.5倍の売れ行きを記録した日もあり、反動減が鮮明だ。

紙おむつ類や女性用基礎化粧品でも、歯みがき類と同様の反動減が起きている。ただ9月の駆け込みの山の高さに比べ、10月以降の買い控えの谷はあまり深くない。

軽減税率の対象の飲食料品でも、コメなど穀類で反動減が起きた。増税後の4日間が前年比で2割前後、販売が減った。9月末に日用品などと一緒にまとめ買いされ、前年比3〜6割増えていたためとみられる。

「(増税前の)最後の土日に大量の駆け込みがあった」と増税前の駆け込みを振り返るのはライフコーポレーションの担当者だ。食品には軽減税率が適用されるため買いだめは生活雑貨や衣料品、酒が中心で、増税直前の一度の買い物に集中したとみられる。増税後1週間は前年比で酒で2割、全体では3%ほど売り上げが減ったというが「10月末には反動も落ち着くとみている」と話す。

家電量販店大手ノジマでは10月に入りテレビの販売が前年同期比2割減、冷蔵庫が4割減だった。ただ、テレビが35%減、冷蔵庫が5割減だった14年の前回増税時と比べると落ち込みは少ない。ビックカメラでも9月に2倍に伸長した冷蔵庫や洗濯機、テレビが10月1〜10日は4割減った。「前回より反動減は少なく、2カ月かそれより早く平年並みの水準に戻る」(同社)とみる。

一方、高額品が多い百貨店は反動減が長期化するとみる。9月に宝飾品や時計などの駆け込みが多く、2〜3割売上高が伸びた。J・フロントリテイリングは9月が32.6%増と前回の増税時と同様の水準で10月の1週間は2割減った。同社では前回は反動減が1年近く続いた。山本良一社長は「消費の二極化や節約志向の高まりで都心と地方の格差が進む」と、特に地方では反動減が長期化すると懸念する。

高島屋では9月の売上高が33.2%増で、10月の約1週間は25%減と14年時とほぼ同じ傾向が見られるという。20年2月期で売上高は0.5%減少するとみる。軽減税率の対象となる食品などの強化で来店頻度を高める戦略に転じている。

■外食の持ち帰り好調

外食やコンビニエンスストアでは、軽減税率の導入で店内飲食と持ち帰りが注目されている。キャッシュレス決済や軽減税率の導入で消費が伸びる要素がある一方で、税率が上がった店内飲食は伸び悩んでいる。新税率に消費者が慣れてきた11月以降の消費の落ち込みを懸念する声も出ている。

増税後は消費者が価格によりシビアになっている。吉野家ホールディングスは軽減税率の対象の持ち帰りは好調だ。だが店内飲食が前年割れで、一部が持ち帰りにシフトしている可能性がある。

ローソンではポイント還元の対象のキャッシュレス決済の比率が従来の20%から25%前後になった。竹増貞信社長はクレジットカードの明細をみて「(駆け込みも含めて消費者が)こんなに使ったんだと気付き11月以降は消費が厳しくなる」と気を引き締める。

鉄道やレジャーは増税の影響は少ないとみる。JR東日本では9月中の定期券の販売収入が前年比56・5%増だった。「10月は反動減があると考えるが、年度全体でみると販売額に大きな影響はない」とJR東日本の深沢祐二社長は話す。

2019/10/12 23:07 日本経済新聞
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